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世相・風俗
朝日新聞社

栃木の女性が輝く 落合恵子さんたちの物語

初出:2015年1月1日〜1月6日
WEB新書発売:2015年2月12日
朝日新聞

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 母親の介護でも知られる作家の落合恵子さんは、栃木県生まれだ。母親が認知症になったのは50代半ばにさしかかるころ。「先を考えたらとてもやれないから明日のことは考えない」。執筆や講演で忙しい落合さんに介護が重なった。しかし、仕事が中心だった落合さんにとって、介護は母親との「再会」でもあった、という。「女性が輝く社会」と言われて久しいが、いったいどんな社会なのか。落合さんら5人の女性の生き方を紹介する。

◇第1章 作家・落合恵子さん/ひたむきに咲く、自分色
◇第2章 広告会社専務・深沢明子さん/両立はきっとできる
◇第3章 印象戦略家・ちとせさん/迷った末、選べばいい
◇第4章 トライアスロンコーチ・渡辺亜希子さん
◇第5章 アパレル店長・SATOKOさん
◇第6章 栃木の女性、データで見ると


第1章 作家・落合恵子さん ひたむきに咲く、自分色

 70年前の1月。宇都宮で落合恵子さんは生まれた。母親はシングルマザーとして落合さんを産んだ。いわゆる「婚外子」である。
 「『ててなし子』なんて言われてね。母にどういう意味かと聞いたら、お父さんのいない子をそう呼ぶのよ、でもいい言葉じゃないから使ってはだめよ、って言われたのを覚えています」
 やがて母は周囲の目を逃れるように、落合さんを連れて東京に出た。仕事をかけ持ちして昼も夜も働く母は、娘を父親のいない子にした自分を責め、神経症に苦しんでいた。
 「ごめんなさいなんて言わないで。産んでくれたことに謝罪なんてしないでと言えたのは、母が晩年を迎えてからでした。若いころは触れてはいけないことだと思ってたのね」
     *
 大学卒業を前に就職活動をすると、面接官は家庭の事情をしきりに尋ねてきた。「生まれてからの人生は自分で責任を取れる。でも、生まれる前のことは関係ないでしょう?」
 納得できない気持ちとやり場のない怒りが、女性を取り巻く問題を考える扉を開けた。
     *
 50代半ばにさしかかるころ、母親が認知症になった。執筆に講演にと多忙を極める暮らしに、7年にわたって介護が重なった。
 日中はヘルパーを頼み、仕事が終わると急いで帰る。夜は原稿を書きながら2時間おきに母の体位を変え、排泄(はいせつ)のケア、水分補給と目が離せなかった。
 「先を考えたらとてもやれないから明日のことは考えない。その日その日が勝負でした・・・

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