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文化・芸能
朝日新聞社

作家「和田竜」誕生 「のぼうの城」「村上海賊の娘」を生んだ頭のなか

初出:2015年1月24日、1月31日、2月7日
WEB新書発売:2015年2月12日
朝日新聞

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 「映像が目に浮かぶ」と評価される文体で、「ネオ時代小説」というジャンルを切り開いている作家、和田竜は2007年、37歳のとき、「のぼうの城」でデビュー。この作品がいきなり直木賞候補になり、2011年から連載を始めた「村上海賊の娘」が吉川英治文学新人賞と本屋大賞を受賞し、今や「時の人」となった感がある。もともとは映画監督を目指していたという学生時代、脚本家を目指し新人賞への応募を繰り返した業界紙記者時代。そして、「のぼうの城」執筆までの意外な経緯……。

◇第1章 気づけば時代小説の旗手
◇第2章 仲間に支えられた記者生活
◇第3章 後輩と見た映画「のぼうの城」


第1章 気づけば時代小説の旗手

 おだやかな海の向こうに島々が連なって見えた。
 作家の和田竜(45)は2014年11月、瀬戸内海の大島にある村上水軍博物館(愛媛県今治市)を訪れた。戦国時代、瀬戸内海で活躍した村上水軍を題材に書き上げた小説『村上海賊の娘』の記念レリーフができ、除幕式があったからだ。
 高さ約2メートル、幅約3メートル、地元特産の大島石を浮き彫りした記念碑を前に、「初めてこの博物館に来てから5年で、こういうものを作ってもらえるなんて。何ていうか、読まれていることを実感します」と語った。


 上下巻約1千ページの大作。終盤は200ページ以上、延々と海戦シーンが続く。「映像が目に浮かぶ」と評価される文体。「ネオ時代小説」といわれるジャンルを切り開いた。出版元の新潮社によると、読者の半数以上が20〜40代。若年層の支持が厚く、時代小説では異例だという。
 中学2年まで暮らした広島には、海賊の末裔(まつえい)だという「村上さん」がたくさんいた。家族旅行で村上水軍の拠点の因島にも行ったことがあり、いつかは書きたいと思っていたテーマだった。史料集めから取材、単行本にまとめるまで4年半を費やした。
 37歳のときのデビュー作『のぼうの城』がいきなり直木賞候補になり、人気作家の仲間入りを果たした和田にとって14年は忘れられない多忙な年となった。
 11年から週刊新潮で連載が始まった『村上海賊の娘』は14年3月に吉川英治文学新人賞を受賞。4月には全国の書店員が最も売りたい本を投票で選ぶ「本屋大賞」に決定したのだ。発行部数は100万部を超え、テレビや新聞から地方のミニコミ誌まで100件以上の取材が押し寄せたという

◎「こりゃだめだと思った」
 もともとは作家になるつもりなどなく、映画監督に憧れていた。きっかけは高校時代に友人が貸してくれた1本のビデオ。アーノルド・シュワルツェネッガー主演のSF映画「ターミネーター」・・・

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