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世相・風俗
朝日新聞社

「弱さ」こそ日本の十八番だった 戦後70年、追い求めた「強さ」の正体

初出:2015年1月1日〜1月20日
WEB新書発売:2015年2月19日
朝日新聞

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 日本は弱点だらけだったからこそ、それを巧みに強さへと変換し、勝負してきたはずだった。だが、いつの間にか弱さを認めず、それを必死に隠しながら、耳障りのいい強く威勢のある言葉を口にすることが増えてしまった。この国は、我々は、弱さが強さにつながることを忘れていないか。いつまでも「みんな同じが幸せ」と思い込んでいないか。未だに経済的な成長ばかり夢見ていないか。「敗者の想像力」を失っていないか。弱いという事実に向かい合うことから、逃げてはいないだろうか。

◇第1章 それって本当に弱点ですか?/言葉とアートとLED
◇第2章 異質なもの、受け入れる心/妖怪と友だちと同調圧力
◇第3章 お金なくても、豊かさ模索/地方と棄民と資本主義
◇第4章 相手にゆだねる優しさ/壁ドンと勝負と生き残り
◇第5章 負けたからこそ、分かること/敗者の想像力


第1章 それって本当に弱点ですか?/言葉とアートとLED

◎不自由や制約かえって突破口に
 ダイジョウブ。
 この言葉が、ちょっとたどたどしい日本語で、2014年秋以来、毎朝のようにテレビから聞こえてくる。
 放送中のNHKの連続テレビ小説「マッサン」のヒロイン、亀山エリーが発するセリフだ。大正から昭和、日本でのウイスキーづくりに挑む夫を支えるスコットランド出身の女性が、ときに夫や周囲を励まし、ときに自分を納得させ、ときに胸を張るために、さまざまなニュアンスで「ダイジョウブ」と言うのだ。
 決して流暢(りゅうちょう)ではない、つまり語学力としては弱いはずなのに、なぜか説得力がある。聞く人の胸に響く。
 演劇・映画評論家の梁木(はりき)靖弘さん(62)は、「彼女のような言葉遣いには異化作用があり、聞く人は一音一音、耳を傾ける。セリフはもともと日常の言葉とは次元が違うが、それが際だつ」と分析する。さらに、「日本社会から見れば、外の人、客人(まれびと)の言葉として、ある種の呪術性も伴うのではないか」と話した・・・

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