【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

教育・子育て
朝日新聞社

雪の分校の子どもたち 生きづらくても「ここでなら」

初出:2015年2月4日〜2月10日
WEB新書発売:2015年2月26日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 豪雪地帯の秋田県湯沢市郊外。全校生徒39人の県立湯沢高校稲川分校は、かつて通学困難地の子どもたちの受け入れ用に設立されたが、今は少人数教育の魅力にひかれた、さまざまな事情を持つ子どもたちの学び舎になっている。「分校で強くなれた」。対人関係の悩みからの不登校、心臓の病気、けがなどを乗り越えていく生徒たちの成長を描くルポ。

◇第1章 遅い春も、ここでなら
◇第2章 病越え、苦手なことも少しずつ
◇第3章 夢のために「教科書買って」
◇第4章 また投げる、決めたからには全力
◇あとがき 門出の分校生、温かく迎えたい


第1章 遅い春も、ここでなら

 豪雪地帯の秋田県湯沢市郊外。背丈を超える雪の壁に囲まれた坂道の先に、小さな木造校舎が姿を見せる。全校生徒39人の県立湯沢高校稲川分校だ。
 「春になると、グラウンドの桜がきれいなんです」。バスで片道30分かけて通学する3年生の佐藤彩夏さん(18)が、そう教えてくれた。
 40年近く前、通学困難地の子どもたちの学びの場として開校した。最近はその役割が変わり始めているという。遠藤聡教頭(54)は「少人数なので、対人関係が苦手な子が進学先に選ぶことも多い」と話す。地元の生徒だけではなく、不登校の経験者や特別支援学級からの進学者らも遠方から集う。



 佐藤さんは中学時代、不登校だった。「空気を読めないと思われるのが怖いから」と、他人の視線ばかり気にしていた。見ていないテレビ番組の話を持ちかけられても、「知らない」と言えず、無理につき合った。
 そんなことを繰り返しているうちに、人と関わるのが面倒になり、中学3年になる頃には登校できなくなった。稲川分校に進もうと思ったのは、連絡を取り合っていた友人に「少人数で伸び伸びと勉強できる」と聞いたからだ。
 でも、もともと気が進まなかった進学。しばらくすると休みがちに。分校を勧めてくれた友人も退学してしまった。「自分もやめよう」。そんな佐藤さんを思いとどまらせたのは、「高校は卒業して」という親の願いや、担任の富谷みゆき先生(49)の「クラスのみんなは思っているほどひどい人たちじゃないよ」という言葉だった・・・

このページのトップに戻る