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経済・雇用
朝日新聞社

来るか水素社会 ここまで近づいた「究極のクリーンエネルギー革命」

初出:2015年2月18日〜2月21日
WEB新書発売:2015年3月5日
朝日新聞

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 「1964年の東京五輪を機に新幹線が走った。2020年の東京五輪では未来に何を残すのか。私は水素社会を残したい」。東京都の舛添要一知事は、こうぶち上げる。2014年暮れ、トヨタ自動車が燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」の市販を始めたことで、水素エネルギー普及への期待がにわかに高まっている。エネルギーを海外に依存する日本にとって、水から作ることもでき、使用時に二酸化炭素を出さない水素は、将来のエネルギーの主役になると期待されている。水素ステーション、水素発電所、輸送を簡単にする「スペラ水素」、下水や再生エネルギーから水素を作り出す新技術など、普及へ向けての活発な動きを追った。

◇第1章 「水素元年」近づく未来
◇第2章 クルマ以外の需要 掘り起こせ
◇第3章 海外から大量輸送 液体なら
◇第4章 CO2フリーへ 挑戦は続く


第1章 「水素元年」近づく未来

 北九州市八幡東区の会社員、橋本孝治(41)は7世帯が軒を連ねるメゾネットタイプの集合住宅に暮らす。専業主婦の妻と子供2人の4人家族。見た目はごく普通の2LDKの住宅だが、電力の一部を水素でまかなっている。
 地中に張りめぐらされた1・2キロの配管で、近くの新日鉄住金八幡製鉄所と集合住宅はつながっている。製鉄所で石炭を蒸し焼きにする際に副産物として出る水素を送り、各世帯の軒下に置いた燃料電池で酸素と水素を反応させて発電する。消費電力の6割近くをまかなえているという。


 水素利用の可能性を探ろうと始まった実証実験に参加して丸4年。「最初は不安もあったが、普通の家と何も変わらない」と橋本。リビングの専用画面で、水素でつくった電気をどれだけ使っているか確認できるが、ほとんど意識せずに暮らしているという。
 実験はJX日鉱日石エネルギー(東京)、岩谷産業(大阪市)、西部ガス(福岡市)などでつくる水素供給・利用技術研究組合(HySUT(ハイサット))が進める。都市ガスと同じ配管を使い、万が一の漏洩(ろうえい)に備えて水素ににおいを付けるなど安全面には細心の注意を払っている。これまでトラブルはないという。
 「一般家庭向けに水素が使えると実証できた。これから水素が街なかに出てくる時代がくる」。HySUTのタウン実証部長、粟津幸雄(あわづゆきお)はそんな近未来を思い描く。
 トヨタ自動車が2014年暮れ、水素と酸素を反応させてつくった電気で走る燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」の市販を始めた。走行時に水しか出さず、究極のエコカーと呼ばれるFCVの市販は世界初。年初に関連特許の無償開放にも踏み切り、15年を「水素元年」と呼ぶ人もいる。
 水素の使い道はクルマを動かすだけではない・・・

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