政治・国際
朝日新聞社

「竹島の日」条例が問うもの 思惑超える日韓のナショナリズム

初出:朝日新聞2015年2月18日〜2月20日
WEB新書発売:2015年3月5日
朝日新聞

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 日韓両国が領有権を主張し、韓国が実効支配する竹島(韓国名・独島)。10年前、島根県は「竹島の日」条例を制定し、松江市では毎年、県主催の式典が開催されている。条例制定は日韓両国で予想以上の波紋を呼び、両国対立の最大要因の一つとも言われている。なぜ、島根県議会は条例を可決するに至ったのか。当事者たちの思惑とは、その思惑を超えたナショナリズムとは、なんなのか。国境の地で起きていることに目を凝らせば、条例が両国にもたらすものが見えてくる。

◇第1章 領土意識の波、思惑超え
◇第2章 韓国過熱、対話厳しく
◇第3章 会ったから知ったこと


第1章 領土意識の波、思惑超え

 2015年2月17日、東京・永田町の内閣府。領土担当相の山谷えり子(64)が語りかけた。
 「22日の竹島の日の式典には政務官を出席させる。また色々取り組んでいきたいのでお聞かせ下さい」
 相手は、竹島が属する島根県隠岐の島町長の松田和久(70)。この日、松田は竹島の領有権と漁業秩序の早期確立を求め、山谷に面会した。
 「竹島の日」(※)条例の制定後、外務省は竹島問題について、国内外の情報発信に力を入れるようになった。「国も相当変わった。解決するまで日本の領土だと訴え続けないといけない」と考える松田だが、面会後にこうも語った。「日韓が主張し合っても良い話は出てこない。日韓の漁船が共に使えることが大事だ」

(※)竹島と島根県「竹島の日」
 竹島は島根県・隠岐諸島の北西約158キロの日本海に浮かぶ島。韓国からは鬱陵島の南東約88キロに位置する。日本では島根県隠岐の島町、韓国では慶尚北道鬱陵郡に属している。総面積は東京ドーム約5個分の0.21平方キロ。韓国は1954年に武装要員を常駐させ、宿舎や灯台、ヘリポートなど設置した。
 島根県議会は日本政府が竹島を同県に編入して100年にあたる2005年、2月22日を「竹島の日」とする条例を可決。毎年、松江市で県主催式典が開かれている。
 日本政府は竹島について「歴史的事実に照らしても、国際法上も明らかに日本固有の領土」「(韓国による実効支配は)国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠」との立場をとり、国際法による平和的な紛争解決を求めている。一方、韓国政府は「独島は歴史的、地理的、国際法的に明白な韓国固有の領土」「領有権をめぐる紛争は存在しない」との立場をとっている。

◎「クジラ」箝口令
 竹島に対する島根県の取り組みは、山陰の漁民の苦難と重なる。
 1952年、韓国が領有宣言し、周辺に入った漁民が韓国に拿捕(だほ)されるケースが相次いだ。アシカやアワビなどの好漁場を失った漁民からは元通りの操業を求める声が寄せられてきた。
 「実態を見ないと、国に訴えるにも迫力が出ない」
 92年5月。島根県議3人が、隠岐諸島・西郷港から県の漁業取締船「清風」に乗り込んだ。午後11時ごろ、漆黒の海へ。竹島をめざした。
 6時間後、寿山(じゅやま)勉(67)が目覚めると、朝靄(あさもや)の日本海に灰色の船が浮かんでいた。船体には「771」の番号。韓国軍艦とみられた。
 多久和忠雄(81)が甲板に出ると、「771」の大砲がすーっと清風に向けられた。約30分、並走。竹島まで20カイリ(約37キロ)に近づいたところで、「771」は清風の前に回り込んで進路を封じた。
 「これ以上は危ない」と引き返した。随行した県の課長は「何か尋ねられたら『クジラを見た』ということにしてください」と箝口令(かんこうれい)を敷いた・・・

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「竹島の日」条例が問うもの 思惑超える日韓のナショナリズム
216円(税込)

日韓両国が領有権を主張し、韓国が実効支配する竹島(韓国名・独島)。10年前、島根県は「竹島の日」条例を制定し、松江市では毎年、県主催の式典が開催されている。条例制定は日韓両国で予想以上の波紋を呼び、両国対立の最大要因の一つとも言われている。なぜ、島根県議会は条例を可決するに至ったのか。当事者たちの思惑とは、その思惑を超えたナショナリズムとは、なんなのか。国境の地で起きていることに目を凝らせば、条例が両国にもたらすものが見えてくる。[掲載]朝日新聞(2015年2月18日〜2月20日、5600字)

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