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朝日新聞社

プロメテウスの罠〔60〕 掘ったら遺跡

2015年03月12日
(25900文字)
朝日新聞

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 福島県の東部・太平洋側(浜通り)にある広野(ひろの)町は、東京電力・福島第一原子力発電所(原発)からほど近く、原発事故や東日本大震災の津波などで大きな被害を受けた。だが、被災者向けの住宅を建設しようとすると、予定地で遺跡が見つかる。当然といえば当然だが、土地は周辺より数メートル高い。「昔の人はこういうところに好んで住むんです」。発掘などに携わった人たちの日々をたどる。

◇第1章 遺跡は残せたはずだ
◇第2章 恐竜の骨落ちたまま
◇第3章 ぎこちないコーヒー
◇第4章 いきなり実地研修
◇第5章 あかん、絶対ある
◇第6章 試掘した方がいい
◇第7章 あっても埋めちまえ
◇第8章 カンは外れていない
◇第9章 私で何とかして
◇第10章 遺跡はありました!
◇第11章 「阪神」のときの後悔
◇第12章 他ならよかったのに
◇第13章 ゴングが鳴った
◇第14章 泣かせてしもうた
◇第15章 発掘、やっぱやらんと
◇第16章 ここには味方がおる
◇第17章 柱は丸、穴は四角
◇第18章 そうか、駅家がある
◇第19章 「これ見て下さい!」
◇第20章 遺跡と建設は両輪だ
◇第21章 町が変わり始めた
◇第22章 出た!…また夢か
◇第23章 遺跡評価、運命の日
◇第24章 「一部保存」を決断
◇第25章 さよなら、帰るわね
◇第26章 1カ月早く終わった
◇第27章 目の色が変わった
◇第28章 「町を誇りに思う」


第1章 遺跡は残せたはずだ

 茶色のくたびれたトートバッグを、白い自転車のかごにどっかと入れた。
 目指すは福島県庁。
 山本誠(やまもとまこと)(49)は福島市内のアパートから颯爽(さっそう)とこぎ出した。
 2012年4月2日。東日本大震災から2度目の春を迎えていた。
 山本は兵庫県教委の専門職員だ。埋蔵文化財の発掘調査をしている。
 それが、この日から1年間、福島県教委で働くことになった。
 復興事業に先立って行う発掘調査を支えるため、派遣されてきた。
 震災と埋蔵文化財――。
 山本には苦い思い出がある。
 阪神淡路大震災が起きた1995年。まだ駆け出しの5年目、29歳だったが、当時も兵庫県教委で、発掘調査にあたっていた。
 工事の予定地に遺跡があるか。見つかった遺跡はどんなものか。
 調べることは山ほどあった。
 兵庫の職員だけでは手が回らない。県外からたくさんの職員を派遣してもらい、何とか乗り切れた。
 でも、都市部を襲った大震災のときにふだん通り発掘していいのか。
 遺跡が見つかっても、復興が叫ばれる中、残したいと言えなかった。
 結局、遺跡はすべて壊された。
 山本は悔やんできた。
 被災地でも遺跡を残せたはずだ。
 あれから17年。
 今度は山本が応援する番だ。
 阪神大震災のときの恩返しをし、当時の反省を今にいかしたい。
 やる気が全身にみなぎった。
 ただ東北には縁もゆかりもない。
 妻子を兵庫に置いての単身赴任。
 通勤用の自転車は前日、近所のリサイクル店で手に入れた。税込み3150円。安さで即決した。
 約15分で県庁に着いた。
 新しい職場である文化財課は9階にある。丸いドアノブをつかみ、古びた扉を勢いよく開けた。
 「おはようございます。兵庫県から来ました山本です。今日からよろしくお願いします」
 通る声であいさつした。
 だが職員たちの反応は鈍かった。
 あれ?
 拍子抜けして、あてがわれた机に座った。特に仕事の指示はない。
 俺、何すんの?
 福島での日々は、戸惑いからはじまった・・・

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プロメテウスの罠〔60〕 掘ったら遺跡
216円(税込)

福島県の東部・太平洋側(浜通り)にある広野(ひろの)町は、東京電力・福島第一原子力発電所(原発)からほど近く、原発事故や東日本大震災の津波などで大きな被害を受けた。だが、被災者向けの住宅を建設しようとすると、予定地で遺跡が見つかる。当然といえば当然だが、土地は周辺より数メートル高い。「昔の人はこういうところに好んで住むんです」。発掘などに携わった人たちの日々をたどる。[掲載]朝日新聞(2015年1月3日〜1月30日、25900字)

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