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教育・子育て
朝日新聞社

貧困と格差、不平等と不寛容 「勉強したい」を邪魔するモノ

初出:2015年2月28日〜3月3日
WEB新書発売:2015年3月19日
朝日新聞

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 「高校に行きたい。高卒資格がほしい」と願う夜間中学生徒(17)。「学びが、平等じゃない」と憤る定時制高校生(18)。「大学工学部に入って、重機を造るような会社で働きたい」と目標を定める生活保護家庭の高校生(16)。「いずれは施設に頼らず、自分で生活したい」と言う児童養護施設で育った専門学校進学予定の高校生(18)。逆境に負けず、学び、いつか羽ばたこうとする若者たちの一途な思いを、誰かが、何かが、妨げようとする。だが、それでも若者たちは、前に進もうとしている。

◇第1章【夜間中学】 もう一度、受験しよう
◇第2章【定時制高校】 学ぶ環境、「平等」求めて
◇第3章【生活保護】 二人三脚、描く自立
◇第4章【児童養護施設】 目標へ一歩、踏み出す春


第1章【夜間中学】 もう一度、受験しよう

◎高校合格。手続きはしてもらえなかった。「卒業資格がほしい」
 雪が降る夜間中学の教室。髪を染め、シンナーにも手を出した少女みどりが、少年鑑別所から出て、以前通っていた昼間の中学校を飛び出した後のことを回想する。
 「雑誌読んでたら書いてあんじゃん、この学校のことが。あたしなんかでも入れてくれんのかよ、と思って来てみたんだよ。
 カツアゲしたって売春したって食ってはいけるんだもん。やめよう学校なんて。そう思ったとき、(黒井先生が)『どうしたの。ああ、この学校入りたいの』って言ったの。そんとき私、幸せになれるのかもしれないって……」。みどりは号泣する。

(映画「学校」より)



 『学校』 1993年公開。山田洋次監督。東京の下町の夜間中学を舞台に、西田敏行演じる黒井先生と、年齢も境遇も様々な生徒たちの交流を描く。日本アカデミー賞6部門受賞。シリーズは第4作(2000年)まで公開された。
     *
 2014年12月の金曜。日が暮れた頃、ノボル(仮名、17)はニット帽をかぶり、勉強道具の入ったかばんを提げて、埼玉県川口市の公民館2階のドアを開けた。毎週2回、ボランティアが開く「川口自主夜間中学」に顔を出すために――。
 入学した中学校には数カ月しか行かなかった。たばこを吸い、万引きをした。非行傾向のある子どもらをケアする、さいたま市内の児童自立支援施設で2年近く過ごした。
 「高校に行きたい」。無料で勉強できる場所をインターネットで探すうち、夜間中学を見つけた。訪ねてみると、父親よりも年の離れたおじさんたちが数学や国語を根気強く教えてくれた。日本語を学ぶ外国人やお年寄りとも席を並べた。
 「気をつかわなくていい。家に帰りたくないから、休憩所みたいなもん」
 家にもノボルの居場所はなかった。幼いときに両親が離婚し、3歳から児童養護施設で育った。中学を出た後は父親のもとや知人宅を転々とした。昼はスーパーやコンビニで時間をつぶし、おなかがすけば市販の弁当や菓子パンを食べた。
 14年春、勉強のかいあって県立高校に合格したが、入学手続きはしてもらえなかった。住み込みで建築の仕事を始め、入学資金をためようとした。朝まで眠らずに働いたことも何度もある。同じ年頃の高校生を見ると、うらやましいと思わずにはいられなかった・・・

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