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世相・風俗
朝日新聞社

お骨の駆け込み寺 「行き場のない遺骨」を引き取るお寺に集う人々

初出:2015年2月28日〜3月7日
WEB新書発売:2015年3月19日
朝日新聞

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 約400年続く東京・新宿区の南春寺は、「行き場のない遺骨」を格安で引き受ける。寺の協力を得て活動するNPO法人「終の棲家なき遺骨を救う会」の受付には、今日も老若男女、さまざまな事情を抱えた人々が相談に来る。「遺骨の引き取りを息子が拒否」「費用をかけられず安い所を探していた」……誰もがいつかは迎える「死」を前に迷い、とまどう人々を丁寧に描いたルポ。

◇第1章 行き場なき遺骨、安住の地
◇第2章 生前予約、子に迷惑かけぬ
◇第3章 友人と合祀、さみしくない
◇第4章 ゆうパックで父を送った
◇第5章 足が悪くて…謝って郵送
◇第6章 孤独死の弟、引き取りに2年
◇第7章 「ひとりもん」71歳の最期
◇あとがき お墓に求めるもの考えて


第1章 行き場なき遺骨、安住の地

◎永代供養3万円 2年で1400件
 約400年続く浄土真宗の南春寺。近代的な4階建てのビル。4年前に建て替えた。エレベーターであがった3階に、寺の協力を得て活動するNPO法人「終(つい)の棲家(すみか)なき遺骨を救う会」の受付がある。
 お彼岸が近づく2014年秋のある雨降りの日。黒のスーツに黒のネクタイをした男性スタッフが、横浜市から見学にきた男性(57)の相談を受けていた。
 男性は両親をこの2年で相次いで亡くした。代々の墓があるのは出身地の大阪。いまいる親戚に先々の墓守を頼ってよいものか。迷い、遺骨を埋葬できずにいる。
 「お墓をたてるにも費用が……」。口ごもる男性にスタッフが諭すように言った。「昔のように、思いもお金も、めいっぱいやってくださいという時代ではないと思いますよ」 次に訪ねてきたのは、北区の男性(77)。14年7月に81歳で逝った妻の遺骨を携えていた。スタッフが骨つぼのなかをあらため、埋葬許可証を確かめた。
 故郷の栃木県に両親の墓がある。だが、生前の妻とは「立派な戒名も葬式もいらない」と話していた。
 遺骨とともに本堂へ。瀧田隆博住職(51)の読経を、両手をひざに置いて聞いた。焼香後、後日合祀(ごうし)される永代供養墓「有縁(うえん)塔」の説明を受けた。「墓の下で新たな縁をつむいでほしい、と名付けられました」


 御影石でできた高さ2・4メートルの有縁塔は、400基ある墓地の中ほどにたつ。男性は、自らも死後に塔に入る「生前予約」を済ませた。「みんなで同じ所に入ればさびしくないね」。ひとりごとのように言った。
 雨がやみ始めた午後、「飛び込み」の持ち込みがあった。2日前に父の遺骨を引き取ったばかりの長女(38)と次女(29)だった。子供のころに両親が離婚した。約20年間疎遠だった父は14年7月、病院でみとる人もなく死んだ。享年69。生活保護を受け、行政による火葬だった。「埋葬だけでも」と戸籍を調べた福祉事務所から電話があった。 元妻(63)も来ていた。本堂で焼香する間、10秒ばかり目を閉じ、手を合わせた。こんな形で再会するとは思わなかったね。心のなかで語りかけたという・・・

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