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世相・風俗
朝日新聞社

妻にも、夫にも、恋人がいます 女と男が紡ぎ出すもう一つの結婚

初出:2007年10月2日〜10月6日
WEB新書発売:2015年4月9日
朝日新聞

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 お互いに「婚外恋愛」を公認する夫婦がいる。いつも一緒にいられないからこそ、別居婚を選ぶ夫婦がいる。「居場所」を求めて、結婚と離婚を繰り返した妻がいる。「妻と子どもと会話しながら食事」という理想の結婚を夢見る男がいる。家庭内別居を続けるけれど、決して離婚はしない夫婦もいる。人から見れば、「えっ」と思うような夫婦だって、それでもやっぱり夫婦でしかない。結婚の形は決まったものがありそうで、実はないのかもしれない。

◇第1章 自由な恋愛、夫婦で公認。心の穴を埋めたくて
◇第2章 互いに仕事やめられない。遠距離だからこそ結婚
◇第3章 離婚・再婚・離婚。施設で働き見つけた「居場所」
◇第4章 「お買い得」自認。理想は妻と会話しながらの食事
◇第5章 自分磨くため海外へ。夫への仕返しじゃない


第1章 自由な恋愛、夫婦で公認。心の穴を埋めたくて

 《「お前に好きな人ができたら、つきあっていいからね」。4年前、夫にそう言われました。一度きりの人生なんだから、婚姻届なんていう紙切れに束縛される必要はない。お互い家庭は守りながら、恋愛は自由にしようじゃないか、と。そして、「婚外恋愛」が始まったのです》
   *
 こんな夫婦のありようをメールで寄せた読者を、九州の自宅に訪ねた。リビングは大型の液晶テレビが小さく見えるほど広い。45歳の女性は白い革のソファに座り、柔らかな物腰で語り始めた。首をかしげると、ふんわりカールした長い髪が揺れる。
 この1カ月で2回、九つ年下の彼に会いに東京に出かけた。空港までは1歳上の夫が車で送ってくれた。
 「彼とのことは、全部、主人に報告します。夫婦の間に、隠し事はないんです」
 長身の夫が傍らに座る。「僕は、そこまで言わなくてもいいよ、って言うんですけど」と、落ち着いた低い声で話し、ほほえんだ。
 妻の婚外恋愛の相手は10人を超え、夫にも月1回会う彼女がいる。妻と夫が肌を重ねることは今はない。それでも、互いが互いを一番信頼していることに疑いはない。
 2人は言う。「こんな形もあるんです。結婚の形って百人百様ですよね」
 4年前。イタリアンの店で夫とランチをしたとき、妻が切り出した。
 「つきあってほしいって言われてるんだけど」
 夫は即答した。
 「つきあってみれば」
 返事の裏には、10年に及ぶすれ違いが積みあがっていた。
 妻は専業主婦だった。2人目の子どもが生まれると、育児にのめり込み、夫の気持ちに反して、夫婦の性的な関係はなくなっていった。その後、夫と副業を始めると、妻の方が夢中になった。本業と家は夫に任せて月の半分は出張という日々が続いた。仕事のコツが分かった妻は「お父さん、違う。そんな風にしたらだめだよ」と意見もした。
 言い争いが絶えなくなったある日、夫は言った。
 「もう、おまえのこと、女として見られんようなった」
 「ほかの男とつきあってみれば」と夫に言われ、妻は「そんなのおかしい」と抵抗したこともあった。
 実際に知人の男性に誘われ、「行ってみたらどうなるんだろう」「やきもち焼かないの?」と聞いたのがイタリアンの店。「浮気を責めるから、相手は逃げるんだ。受け止めたら、お前は、おれから絶対逃げない。家庭は壊れない」。妻は背中を押された。
 1カ月後、夫にも「彼女」ができた。携帯の出会い系サイトで出会った年下の女性。「今日、会ってくるから」という夫を、妻は「いってらっしゃい」と送り出した。「だって自分から始めてしまったから」。自分を納得させながらも、心に小さな穴が開いたような気がした・・・

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