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朝日新聞社

「ゴミ屋敷」に老夫婦 いつの間にか養女 認知症の高齢者7人に1人

初出:2015年4月10日〜4月26日
WEB新書発売:2015年4月30日
朝日新聞

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 認知症で財産や年金を巡るトラブルが増えている。自宅が「ゴミ屋敷」になっていた夫婦。年金は息子が使い込んでいた。90代男性は、繁華街のカラオケスナックで出会った女性を養女にしたが、1年で預金1500万円が使われていた。いま、認知症の人は65歳以上の7人に1人。10年後には5人に1人になるという。もはや誰もが認知症とは無関係ではいられなくなる「認知症社会」を考える。

◇第1章 年金消え「ゴミ屋敷」に老夫婦
◇第2章 年金の日、あの子が来る
◇第3章 養子縁組、覚えてない
◇第4章 思わぬ遺言 相続争い
◇第5章 認知症と生きていく


第1章 年金消え「ゴミ屋敷」に老夫婦

 「お願いです。病院に連れていって」
 2014年冬、岡山県内の自宅で自治体の職員に保護されたとき、70代の妻はそう叫んだ。そばには80代の夫。ともに、認知症を患っていた。
 自宅は「ゴミ屋敷」になっていた。捨てられずにたまったゴミの袋が山積みになり、古くなった弁当や汚れたオムツが床を覆っていた。同居していた40代の息子は外出していた。
 夫婦は二十数年前、夫の定年を機に故郷の岡山県に移り住んだ。年金は夫婦で月約30万円あり、安心した老後を送れるはずだった。
 だが、2人の暮らしは、認知症によって大きく変転した。
 移り住んで10年ほどすぎた頃、夫は脳梗塞(こうそく)を起こし、車いすでの生活になった。妻の話を忘れる。過去の記憶と現在を混同する。脳梗塞の後遺症で認知症も進んだ。
 「老老介護」は重労働だ。妻はデイサービスも利用しながら夫の生活を支えた。介護疲れから酒を飲むようになり、やがて認知症になった。家が荒れ始めたのは、数年前からだ。
 そんなとき、県外にいた息子との同居が始まった。
 それからの夫婦の暮らしぶりについて、福祉関係者の記録にはこう残っている。「何カ月も入浴できず、適切な食事もとれず、ネグレクト(介護放棄)状態であった」
 息子は独身で無職。借金もあった。夫婦の年金が振り込まれると、決まって20万円が消えていた。夫名義のカードの借り入れも約300万円にのぼった。
 近所などからの通報で、自治体もこの家の異変に気づいた。14年冬、自治体職員が息子の留守を見計らって家に入り、夫婦の保護に踏み切った・・・

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