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世相・風俗
朝日新聞社

週末の夜は屋根裏部屋へ セックスレス夫婦35%、ぬくもり求めて

初出:2007年12月4日〜12月7日
WEB新書発売:2015年5月21日
朝日新聞

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 週末の夜、子どもを寝かしつけてから、妻と屋根裏部屋で落ち合う。6畳ほどの広さにセミダブルベッドが一つ。50歳を目前にした男性は薬をこっそり飲む。「薬に頼るのは私に魅力がないから?」と妻に思わせたくない。1カ月以上セックスをしていない夫婦は35%、45歳以上では46%にのぼるという。夫婦の体と心の距離って? 心地よい間合いを探す人たちを追う。

◇第1章 2人きりの屋根裏部屋。体と心で結びつく
◇第2章 ネットゲームに没入する夫。戻って来ない
◇第3章 海辺のペンション夫婦。息が詰まるという夫
◇第4章 連れ添って40年。離婚したら一番近しい人に


第1章 2人きりの屋根裏部屋。体と心で結びつく

 週末の夜、50歳を目前にしたその男性は薬をこっそりと飲む。そして妻を2人だけの空間、屋根裏部屋へ誘う。昔の雑誌や学生時代のがらくたを積み上げた部屋は6畳ほどの広さだ。それらを片づけ、使っていなかったセミダブルのベッドを持ち込んだ。2人の居場所はベッドの上だけ。その距離で数時間を過ごす。
 以前は、「今日の帰りは」「次の日曜は」といったスケジュールの連絡が2人の会話のほとんどだったような気がする。非日常の空間で過ごす時が、仕事で会った人のこと、子どもが夢中になっている遊びのこと、思い出話……といった何げない会話をまた、取り戻させてくれた。
   *
 「枯れた」。数年前、45歳でそう実感したときは衝撃だったという。年齢的な体の変化は避けられないが、「男」として、もう、終わりなのか。体の結びつきがなくなると、心も離れていきそうだ――。前の妻との苦い思い出が、頭をよぎってもいた。
 焦る気持ちで男性が訪ねたのは、近所の親しい医師だった。勃起(ぼっき)不全(ED)と診断され、治療薬を処方された。どうにも恥ずかしく、都内の自宅から誰も知る人はいないだろうという所まで離れ、薬局を探した。1錠1200円くらいだったか。女性の薬剤師が、にやりとしたのが忘れられない。
 そんな思いをしながら手に入れた薬を妻に知られないように飲み、3年ぶりくらいに誘った。効果はてきめんだった。しかし、隣で寝息を立てる子どもが気になって、集中できなかった。
 「2人の場所を作らないか」。屋根裏部屋の提案をしたのにはそんな事情があった。それは、10ほど年下の妻が「女」として見られなくなった時期とも重なる。
 それまでに大きな転機は2度あった。
 一つは子どもに授乳している姿を目撃したこと。母と子が母乳でつながっている光景は「神々しかった」。恋愛感情とは別の、尊いものを慈しむような気持ちが起きた。
 もう一つは、「また子どもがほしいなあ」と妻が言ったこと。男の勝手な言い分だが、子育てに追われ、子に奪われた妻は「女」でなくなっていった。自分の心の中で、「セックスはただの生殖活動か」とつぶやいていた・・・

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