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朝日新聞社

電気代は月190円 5アンペア節電生活、3年の記録

初出:朝日新聞2012年7月26日〜2015年5月13日
WEB新書発売:2015年5月21日
朝日新聞

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 電気契約を40アンペアから最小の5アンペアに切り替えたのは3年前。福島で震災に遭い、電気頼みの生活を見直そうと思い立った記者は、エアコン・炊飯器・冷蔵庫…次々と電化製品を手放していく。電気代はついに月190円に。自作の太陽光発電にも挑戦した。「単身者だからできる」と言われる中、新婚生活が始まった。約1年たって妻に聞いた。「5アンペア生活楽しい?」「楽しくない」「つらい?」「全然、つらくない」

◇第1章 [一人暮らし記者が挑戦]5アンペアで暮らしてみた
◇第2章 [一人暮らし記者、挑戦6カ月目]5アンペア生活、越冬編
◇第3章 [記者の試み、1年に]これからも5アンペア生活
◇第4章 [5アンペア記者、続けてます]電気代月190円、達成
◇第5章 [記者が実践]5アンペア、新婚でもできた


第1章 [一人暮らし記者が挑戦]5アンペアで暮らしてみた

最初はびくびく
 2012年7月上旬。東京電力のカスタマーセンターに電話した。係の女性は言った。「エアコンも電子レンジも、掃除機の『強』も使えなくなります。5アンペアでは、普通の生活はできなくなりますよ」
 それから9日後。ブレーカーを交換するために自室を訪れた工事の男性も、部屋の家電をくまなくチェックして言った。「ドライヤーもトースターもだめですけど、いいんですか?」
 いいんです、もう使いません。そう押し返した。
 東京電力福島第一原発事故の発生前後の2年半、記者は福島県に住んでいた。放射性物質を避けるため、マスク姿で通学する小学生の姿が目に焼きつく。いま、将来のエネルギー政策の議論が大詰めを迎え、野田佳彦首相は原発再稼働の理由を「国民の生活を守るために」と言った。
 都心で暮らしながら、電気に頼らずどこまでやれるか。最初の数日は、いつブレーカーが落ちるか、びくびくしていた。テレビと照明を同時につけられるのか、扇風機はまわせるのか。手探りのまま、とにかく家電を二つ同時に使うのを避けた。敵が見えないようで消耗した。

片っ端から測る
 そんなとき、家電ごとのアンペアをチェックできる消費電力計をインターネットで見つけ、さっそく購入した。値段は5千円。使い方は、コンセントにつけて、家電のプラグを差し込むだけだ。気になる部屋の家電を片っ端から測ってみた。


 扇風機は「弱」で0・3アンペア、「強」でも0・7アンペア。優れた省エネ家電だった。冷蔵庫は通常は0・8アンペアほどだが、扉の開閉が頻繁だと、最大で2アンペアほどになる。洗濯機は洗っているときは1・8アンペアだが、脱水時に4アンペアまではね上がった。パソコンは起動時に1アンペアを記録。後は0・6アンペアほどで安定した。同じ家電でも、使い方や状況で変わるのは発見だった。
 電気が「見える」ようになり、ブレーカー落ちの不安は解消した。洗濯機を回すときはテレビは見ない、といった家庭内のピークシフトのルールが決まっていった。
 もう一つの発見は、「超エコ生活モード」(コモンズ)の著者で、40年にわたって低電力ライフを実践する千葉県松戸市の小林孝信さん(63)にいただいたアドバイス。「わざわざ電気を使う必要のないものが、身の回りにたくさんある。例えば、お米は炊飯器より鍋で火にかけたほうが早く、おいしく炊けます」
 13アンペアを使うわが家の電気炊飯器は使えない。10年前から鍋で米を炊いているという食担当の同僚に助けを求めると、「沸騰するまで強火、その後弱火で15分。ふたには重しを」と教えてくれた。
 ガスコンロで初めて挑戦。30分弱で、甘みたっぷりホクホクのごはんが炊きあがった。これまで当たり前のように電気を使っていたが、ガスでこんなに早くおいしく炊けるなんて。

ゼロは到底無理
 5アンペア生活について会社で話すと、同僚や上司からは手厳しい指摘が相次いだ。
 「単身者だからできる。家族がいる人は無理でしょう」
 確かに受験生がいれば電子レンジで夜食を温めるだろうし、エアコンも使うだろう。5アンペア生活は極端かも知れない。ただ東電管内では11年度、アンペア契約変更の件数(引き上げ含む)が、前年度の1・5倍に。家族世帯でもアンペアダウンを考える人が増えているのは確かだ。
 「ビールやアイスはコンビニエンスストアで買うの? 他人の電気を結局使っているだろう」という声もあった。
 その通り。エアコンの利いた職場で涼んでいるし、コンビニで冷えた飲み物やおにぎりを買うし、仕事柄パソコン充電も欠かせない。社会人として暮らす以上、電力消費ゼロは到底、不可能だ。
 悔しい。せめて携帯の充電だけでもと、高機能の携帯式ソーラー充電器を約1万2千円で購入した。窓際に置いてみると、薄曇りでもフル充電ができた。わずかなエネルギーの「自産自消」だ。
 熱帯夜でも扇風機を回し、布団にゴザを敷いて寝ている。節電の先輩・小林さんから教えてもらった知恵の一つだ。思ったより涼しく、快適だった・・・

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電気代は月190円 5アンペア節電生活、3年の記録
216円(税込)

電気契約を40アンペアから最小の5アンペアに切り替えたのは3年前。福島で震災に遭い、電気頼みの生活を見直そうと思い立った記者は、エアコン・炊飯器・冷蔵庫…次々と電化製品を手放していく。電気代はついに月190円に。自作の太陽光発電にも挑戦した。「単身者だからできる」と言われる中、新婚生活が始まった。約1年たって妻に聞いた。「5アンペア生活楽しい?」「楽しくない」「つらい?」「全然、つらくない」[掲載]朝日新聞(2012年7月26日〜2015年5月13日、9700字)

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