医療・健康
朝日新聞社

S状結腸がんと闘う 「白い便器の中が、真っ赤に」落語家、三遊亭歌笑さんの場合

初出:朝日新聞2015年5月19日〜5月23日
WEB新書発売:2015年6月11日
朝日新聞

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 異変は、ホテルの部屋のトイレの中で起きた。用を足した後、白い便器の中が、真っ赤に染まっていた。実は2カ月ほど前にも、トイレで出血に気付いたことがあった。嫌な予感がした。診断名は、「S状結腸ガン」の「ステージ1(早期)」。そこから、手術によるストーマ(人工肛門)造成に始まる闘病がスタートした――。落語家・三遊亭歌笑さんの、闘病の経緯をレポートします。

◇第1章 旅先のトイレで出血
◇第2章 慣れぬ人工肛門
◇第3章 ゆるく帯締め高座へ
◇第4章 人工肛門、延びた閉鎖
◇第5章 [情報編] ストーマ外来で不安解消


第1章 旅先のトイレで出血

 2014年5月、落語家の三遊亭歌笑(さんゆうていかしょう)さん(75)は浜松市のホテルにいた。月1回、市内の文化センターで開いている落語教室で弟子たちを指導するため、東京から浜松に来ていた。
 異変は、ホテルの部屋のトイレの中で起きた。用を足した後、白い便器の中が、真っ赤に染まっていた。実は2カ月ほど前にも、トイレで出血に気付いたことがあった。嫌な予感がした。一緒にホテルに滞在していた、弟子の大須(おおす)くるみさん(49)を呼んだ。
 「痔(じ)だろうか?」「いや、それにしては量が多すぎませんか」。ただ、翌日もその翌日も、出血はなかった。「きっと、何ともない」。不安を打ち消すように歌笑さんは東京へ、くるみさんは自宅のある愛知県半田市へと戻った。
 しかし、くるみさんは不安で仕方なかった。「(歌笑)師匠が仕事中に倒れ、布団にくるまっている夢をみたんです」。目が覚め、時計をみると、夜中の午前0時を回っていた。胸騒ぎがして携帯電話を手に取った。
 「元気だよ」。返ってきたのは、歌笑さんの寝ぼけた声。それでも不安が拭えない。「とにかく、病院へ行ってください」と、くるみさんは懇願した。
 翌朝、自宅のトイレで、また出血に気付いた。自宅に近い都内の総合病院を受診し、検査をしてもらった。診断名は、大腸がんの一種の「S状結腸がん」。長さ1・5〜2メートルの大腸のうち、直腸に続いて肛門(こうもん)に近いところにあるS状結腸に、悪性腫瘍(しゅよう)ができていた。この腫瘍から出た血が、便に混ざっていると考えられた。
 「最初は、病院に行こうとは考えていませんでした。でも結局、くるみが見た夢は正夢みたいなものでした」と歌笑さんは言う。
 「このまま入院して、手術をしましょう」と医師から言われた。だが、15年6月には東京の浅草演芸ホールで寄席が控えていた。「それだけはこなさせてください」とお願いした。「再び出血があればすぐに受診し入院する」という条件で、手術は7月に延期してもらった。
 S状結腸がんについては、まだ何も知らず、2カ月後に人工肛門(ストーマ)をつくることになるとは、考えてもいなかった・・・

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S状結腸がんと闘う 「白い便器の中が、真っ赤に」落語家、三遊亭歌笑さんの場合
216円(税込)

異変は、ホテルの部屋のトイレの中で起きた。用を足した後、白い便器の中が、真っ赤に染まっていた。実は2カ月ほど前にも、トイレで出血に気付いたことがあった。嫌な予感がした。診断名は、「S状結腸ガン」の「ステージ1(早期)」。そこから、手術によるストーマ(人工肛門)造成に始まる闘病がスタートした――。落語家・三遊亭歌笑さんの、闘病の経緯をレポートします。[掲載]朝日新聞(2015年5月19日〜5月23日、4700字)

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