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政治・国際
朝日新聞社

ロヒンギャ族、群馬に200人 日本に生きる無国籍者たち

初出:2014年12月19日、2015年5月21日、5月22日
WEB新書発売:2015年6月11日
朝日新聞

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 ミャンマーの少数民族でイスラム教徒のロヒンギャ族。2015年5月、インドネシアなどに相次いで密航船が漂流し、注目が集まった。日本にも群馬・館林に200人が暮らしている。ミャンマー政府が国民と認めないため、無国籍のままだ。就労や社会保障の権利が与えられず、滞在8年が経った男性もいる。日本には統計上600人の無国籍者がいるという。国籍のはざまで生きる人たちを追った。

◇第1章 ロヒンギャ、無国籍の苦境
◇第2章 日本に生まれ「無国籍」
◇第3章 帰化したい、重い扉


第1章 ロヒンギャ、無国籍の苦境

社会保障権利なく「仮放免」身分続く
 群馬県館林市で暮らすラファットさん(39)は、ミャンマーから2006年3月に来日した。8年以上滞在するが、就労は認められていない。糖尿病を患い、だるさや足のしびれに苦しむが、国民健康保険などにも加入できない。1回2万円以上の医療費が払えず、半年間病院に行っていない。「今は自分の体が心配。病院に行きたい」と話す。
 こうした無権利状態は、ラファットさんが、1982年制定のミャンマーの法律で「国民」であることを否定されたイスラム教徒の少数民族「ロヒンギャ」だからだ。現在は「仮放免」(※1)の身分で滞在する。
 ロヒンギャは、母国では不法移民と扱われ、国籍も旅券もない。偽造旅券による日本への不法入国が見つかれば、出入国管理及び難民認定法違反の疑いで入国管理局に収容される。その後、一時的に拘束が解かれる仮放免となることが多いが、就労や社会保障の権利は与えられず、居住地域外への移動も禁じられる。
 難民認定(※2)されて日本人と同じ権利が認められる人や「人道的な配慮」で在留特別許可(※3)を受け、求職や就労が可能になる在留資格を得る人もいる一方、何年も仮放免の更新が続く人もいる。在日ビルマロヒンギャ協会によると、現在は29人が仮放免の状態だという。


 ロヒンギャはミャンマー西部のラカイン州に多い。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告によると、宗教や政治をめぐる摩擦から、1978年と91〜92年にそれぞれ約25万人が難民化してバングラデシュに渡り、その後も周辺国に流出が続く。2012年にも多数派の仏教徒アラカン族と衝突し、多数の死者が出た。UNHCRの報告では、12年以降、約8万7千人がボートで海を渡り、転覆や食糧不足で多くの死者が出ている。

 ※1 仮放免 出入国管理及び難民認定法違反が疑われ、入国管理局が収容した外国人の身柄を一時的に解放する措置。許可なく在住地域から移動することは認められない。在留カードは持てず、就労や国民健康保険などへの加入も認められない。保証金を納め、通常1〜3カ月とされる放免期間ごとに入管に出頭して許可を更新する必要がある。

 ※2 難民認定 難民条約や難民の地位に関する議定書に基づき、人種、宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがある外国人を法相が「難民」と認定し、保護する制度。認定されると、日本国民と同じ待遇が受けられ、国民年金や児童扶養手当などの受給資格も得られる。2013年には3260人が申請した一方、認定は6人と極めて限られている。

 ※3 在留特別許可 出入国管理及び難民認定法第50条に基づき、同法に違反した状態の外国人に法相の裁量で特別に在留許可を与える措置。永住許可を受けている/かつて日本国籍だった/日本人と結婚している/人道的な配慮が必要――などの場合に認められる。基準を明確化しようと、入国管理局がガイドラインを設けている。

いとこが殺され出国、故郷の妻連絡つかず
 「仮放免」の身分のまま館林市などで暮らすロヒンギャの人々に話を聞いた。母国でも日本でも生活に必要な権利が認められない苦境が浮かぶ。
 ロイス・ラハマンさん(41)は大学生の時にミャンマーを出た。現地でロヒンギャは大学進学も認められないが、民族を隠して通っていたという。だが、いとこが何者かに殺され、危険を感じた。1人でマレーシア、インドネシアを経て06年に来日したという・・・

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