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教育・子育て
朝日新聞社

5歳で小説執筆、学校に行く意味あるの? 「エジソン」たちの居場所

初出:2015年5月28日〜6月6日
WEB新書発売:2015年6月18日
朝日新聞

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 算数は教えられなくてもできる。どんな曲も、いきなり両手で弾ける。物理や化学の参考書500ページ近くを1〜2時間で読み終える。5歳から小説を書き始め、すでに数十作品――。エジソンのように突出した才能を持つ子どもは、学校の集団教育になじめない子も少なくない。そうした全国の小中学生15人が毎月、東大先端研に通っている。

◇第1章 出る杭、もっと伸びよ
◇第2章 「ピアノ弾く学者」でもいいじゃない
◇第3章 恨まない、私は描く、堂々と
◇第4章 人工臓器作る夢、変わってる?
◇第5章 育てた野菜、おいしく食べる「博士」
◇第6章 小説書くのに学校は必要?


第1章 出る杭、もっと伸びよ

 「義務教育なんていらない」
 東京大学先端科学技術研究センターの会議室。旧ライブドアの堀江貴文・元社長の言葉に、子どもたちは目を丸くした。4月、みんなにはつらい新学期。
 「あんな大人がいるなんて信じられない」
 「いらないとは思わないけど、なんか少しうれしかった」
 そうつぶやいたのは「異才発掘プロジェクト・ROCKET(ロケット)」の小4〜高1のメンバー。
 エジソンのように突出した才能を持つ子には、コミュニケーションが苦手だったり興味が先走ったりして、学校の集団教育になじめない子も少なくない。そうした小中学生を世界のトップランナーに育てようと、2014年、東大先端研と日本財団が取り組み始めたプロジェクトだ。
 10人の募集枠に、全国から約600人の応募があり、締め切りを過ぎても問い合わせが絶えなかった。面接などで選ばれた15人は、毎月、東大に通い、スペシャリストによる特別授業や個別プログラムを受けている。
 これまでの特別講師は、「ロビ」の開発者で知られるロボットクリエーター・高橋智隆さん、「渋滞学」の著者で数理物理学者の西成活裕さん、元陸上競技選手の為末大さん……。


 「学校の授業よりずっとおもしろい」と、小5の甲斐潤樹(みつき)君(10)は目を輝かせる。小学校に入学して1週間、担任から「落ち着きがない」「勝手に発言する」などと叱られ続け、追いかけっこ。1年生から週1、2度の登校がやっとになった。「みんなと同じことができなければ集団生活はなりたたないと言われました」と、母(45)。
 だが、優秀だ。園児のころ、大人向けのクジラの図鑑に興味を持ち、カタカナは全部覚えた。算数は、教えなくてもできる。突出しているのは、魚類、両生類、爬虫(はちゅう)類への探求心。
 学校に行きづらくなってから、近くの水族館「うみたまご」にほぼ毎日通い、学芸員を質問攻めにした。自宅では、14匹のサンショウウオやイシガメやウーパールーパーなども育てる。中でも、環境省が絶滅危惧種に指定しているオオイタサンショウウオに特に興味がある。


 iPadを見せてくれた。大人顔負けのリポートがどっさり蓄積されている。サンショウウオの生育の適温は何度か、動きや大きさを観察してグラフに。結果は15度以上17度未満の場所で多く生息し、13度未満か、27度以上で動かなくなる。今度は屋内で適温管理したものと、ベランダで越冬させるものに分け、比べた。なぜか温度の下がる屋外の方が育ちがいい。
 東大大学院を出て国立科学博物館で学んだこともある学芸員の今井謙介さん(43)に理由を尋ねたが、一人前と扱われ、即答はしてもらえない。「彼は僕を超えている。将来が楽しみだし、うらやましい・・・

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