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政治・国際
朝日新聞社

もの言えぬ大国 天安門事件から26年

初出:2015年6月2日、6月3日
WEB新書発売:2015年6月25日
朝日新聞

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 1989年、中国共産党の胡耀邦元総書記の死去をきっかけに、北京の天安門広場を学生らが埋めて民主化などを要求、事件は日本などでも大きく報道された。当局は事件を武力で制圧し、今でもこれを「動乱」と位置づけている。中国はその後、経済面で大きく成長したが、人権などの現状はどうなっているのだろう。世界を動かす「大国」の人権状況の今を追った。

◇中国、NGO封じ込め
 ・「痴漢防止」運動前に拘束
 ・習体制、思想の流入を警戒
 ・海外との連携、敵視

◇物言えぬ、都会も農村も
 [犠牲者追悼]墓参りさえ許されず
 [強制撤去]不満訴えた青年、変死
 [大学教育]脅かされる学問の自由


中国、NGO封じ込め

◎「痴漢防止」運動前に拘束
 「中にいるのはわかってるんだ。早く出てこい」
 2015年3月6日午後10時半ごろ。北京のアパート4階にある李テイテイさん(25)の自宅ドアをノックする音がした後、携帯電話にショートメッセージが届いた。外からこじ開けようとする気配を察し、ドアを開けた。制服と私服の10人近い警官らが立っていた。

理由告げず連行
 理由を告げられぬまま連行され、派出所に着いて知った容疑は、故意に騒動を引き起こす「騒動挑発」。すぐ解放されると思ったが、それは1カ月以上続く拘束の始まりだった。
 李さんは中国各地の女性と3月8日の「国際女性デー」に合わせ、バスや地下鉄で痴漢防止のステッカーを配る計画を立てていた。ステッカーには「痴漢をなくして、みんな安全に」「痴漢をやめろ。おまえはもう見られている」などのスローガンを印刷した。乗客に配ってくれる有志をネットで募ったが、実行する直前に拘束されたのだ。
 取り調べは屈辱的だった。たばこの煙を顔に吹きかけられた。親不孝だとなじられた。手錠をかけられたままののしられたり、夜眠らせてくれなかったりすることもあった。
 心配された正式逮捕には至らず、4月13日に釈放された。「取保候審」と呼ばれる条件付きの釈放で、今も容疑者扱いされ、移動や活動が制限されている。
 北京で生まれた李さんは、幼いころから活発な少女だった。陝西省西安の大学に進学し、女性の権利をめぐる問題に取り組んだ。卒業後は「公益のために働きたい」と、人権NGO「北京益仁平センター」のスタッフになった。
 同センターに入ってからも、家庭内暴力や性的少数者への差別などに反対する運動を続けてきた。女性のトイレの数が足りないと訴えて男性用トイレを占拠するなど、仲間とユニークな行動を仕掛けて注目を集めた。見た目はどこにでもいる若者。行動力は抜群だが、政治的な主張を掲げたわけではない。
 なぜ、そんな李さんが狙われたのか。そこには共産党政権のNGOに対する強い警戒感が見え隠れする・・・

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