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世相・風俗
朝日新聞社

「なぜ犬肉はダメ?」 昆虫もカラスも…アジアの食文化

初出:2008年5月28日、2009年11月28日、2012年8月5日
2013年7月13日、2014年4月5日、2015年6月22日
WEB新書発売:2015年7月2日
朝日新聞

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 中国の犬肉祭をめぐり、今年も国内外から反対の声が沸き上がった。地元の女性は「なぜ犬はだめ? 豚は、牛は? 考えを押しつけないで」と憤る。犬鍋をつつく女性は「これは昔からの食習慣。日本人が鯨を食べるのと同じようなものよ」。アジアでは昆虫を食べる文化もあるが、西欧では野蛮な行為として忌避されてきた。茨城にはカラスを食べる文化もある。賛否は別として、どんな食文化なのか、愛好家らに話を聞いた。

◇第1章 ピリピリ「犬肉祭」の街
◇第2章 犬肉論争、再び
◇第3章 虫グルメ、旬が来た?
◇第4章 エコで安上がりな未来の栄養食
◇第5章 カラス食べる文化、特産品化で守ろう


第1章 ピリピリ「犬肉祭」の街

◎中国内外で批判 店「撮るな」「食用でない」
 中国南部の広西チワン族自治区玉林市で2015年6月22日の夏至に合わせて催される「犬肉祭」に対し、国内外で反対の声がわき上がっている。一方、自らの食文化として親しむ地元住民は例年通り、犬を食べるつもりだ。21日に市内の市場を訪ねると、緊張感が漂っていた。
 市場でつるされた犬肉にカメラを向けると、「撮るな」と、屋台の男性に詰め寄られた。市場の管理事務所員3人も現れ、「写真を撮ってはいけない」と制した。屋台の女性は「家庭で親や子ども、だんなを愛せばいい。なぜ犬を愛す?」とまくしたてた。
 犬肉の商売に関わる人たちが神経質になっているのにはわけがある。中国の東北部や南部には犬肉を食べる習慣があるが、「犬肉祭」を催す玉林市はその象徴的存在となっており、世界の愛犬家の批判が集中しているのだ。
 中国の人気女優、ファン・ビンビンさんら、国内外の有名人が反対を表明。署名活動も広がり、ツイッターでも多くの投稿がある。地元政府は祭りに関与していないとの立場だ。
 玉林市内の道路脇では、おりに入った生きた犬が販売されていた。目的を聞くと、売り手たちは「食用ではない」などと答えた。近くには、警察官が配置されていた。


 住民によると、犬肉を出す店が十数軒集まる通りではこの2年ほどで、看板から犬を意味する「狗」の字が消えたという。それでも、ある食堂の経営者(40)は「3キロの犬肉の鍋を120元(約2400円)で提供する」と話した。
 市場の服販売店の女性(50)は普段から犬肉を好み、15年の夏至にも必ず食べると語るが、「反対する人が多くて、地元でもこそこそ食べる人が多くなった」ともらした。「なぜ犬はだめ? 豚は、牛は? 自分たちの考えを、私たちにまで押しつけないでほしい」と憤った。
 広東省から来たNGO職員(23)によると、全国から動物愛護団体のメンバーらが玉林市に集結。22日に市政府近くで抗議行動をする予定という。「反対運動が盛り上がっても、犬肉を食べる習慣は続いている。玉林でやめさせられれば、運動に弾みがつくと思う」

◎犬肉 根づく冬の味覚
 寒波が訪れた夜、タクシー運転手に名物料理を尋ねると、「寒い日は犬の肉がいいよ」。中国江西省南昌には、犬鍋屋が集まる通りがある。
 恐る恐る向かうと、食堂街に白い湯気が上っていた・・・

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