【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

世相・風俗
朝日新聞社

中高年ライダーに捧ぐ ひざガクガク…禅の心で走れ

初出:2012年10月19日〜2014年12月31日
WEB新書発売:2015年7月9日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 1980年代のバイクブームを支え、再び二輪車に戻ってきた「リターンライダー」が増加。いまやライダーの半分は50代以上という。しかし、体が硬くなり、目も悪くなり、衰えを自覚しないと事故のもとだ。「低速を制するものがライディングを制する」。専門家は「禅の心で走れ」とアドバイスする。

◇第1章 夫婦仲良く五感を刺激
◇第2章 まずは100cc前後から修練
◇第3章 禅の心で低速極めよう
◇第4章 荷物少なく、休憩しっかり
◇第5章 増える中高年ライダー。青春の風再び
◇第6章 ライダー、年齢の死角


第1章 夫婦仲良く五感を刺激

 還暦をすぎて5年たつ。そろそろオートバイからの引退も考えるころでは? 「いえいえ、まだまだ乗り続けますよ」。東京都府中市の栢森丈夫(かやもりたけお)さん(65)がとんでもない、と笑顔で手を横に振った。
 在宅介助の仕事を今もこなす体は、すっきりと引き締まっている。その秘密はオートバイ。「乗るには両手両足はもちろん、全身を使い、集中力も必要。難しいことに挑戦し続けたいんです」
 地質調査会社の技術者だった40歳の時、10代後半から遠ざかっていたオートバイに再び本格的に乗り始めた。シートにまたがり、アクセルをひねって風を受ければ、ささいな心配事や悩みは後方に流れ去る。前向きになれた。
 丈夫さんはオートバイの魅力は「におい」にあると思っている。大海原や木々、草原の香りを体全身で受け止め、感じる。車では味わえない五感を刺激される感覚がある。
 ショーウインドーに時折映る「バイクにまたがった自分の姿」にも大いに刺激を受けるそうだ。
 50歳で下あごにガンが見つかったときも、オートバイのおかげで前向きになれた。余命数カ月の宣告にも、「絶対に生きて帰る」と家族に宣言し、17時間に及ぶ手術と2カ月の入院を乗り越え、職場復帰した。
 そんな丈夫さんを支え続けた保育士の妻、幸子さん(66)がある日、言い始めた。「私も乗りたい」
 2人の息子が「母さん、やめて」と頼んでも、幸子さんはあきらめない。教習所の教官もみな応援に回って、52歳で二輪免許を取った。今は、子育て支援施設への通勤で、毎日乗る。
 幸子さんが笑う。「日頃の整備もガソリン補給も、主人が、みんなやっておいてくれる。上げ膳据え膳で、私、幸せです」。62歳の誕生日プレゼントには、丈夫さんからホンダのスーパーカブを贈られた。
 丈夫さんは「オートバイの話題を始めれば、夫婦の会話も尽きることがありません」と言う。2人が何よりも気遣うのは安全のこと。「この年で事故を起こせば、『それみたことか』と言われてしまうから・・・

このページのトップに戻る