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文化・芸能
朝日新聞社

大相撲ちょこっとウンチク 国技館「ひがぁ〜しぃ〜」、実は北

初出:2015年5月10日〜5月24日
WEB新書発売:2015年7月9日
朝日新聞

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 番付表は1人の行司が手書きしています。髪の毛のように細い字を書く時は、使い古して毛が7〜8本しかない筆を使うそう。「ひがぁ〜しぃ〜」「に〜ぃし〜」。力士の呼び出しは東西ですが、国技館の「東」は実は北に位置しています。テレビ中継を午後6時きっかりに終わらせるためには、竹ぼうきが登場。不戦勝のとき、懸賞金はどうなる? 「大入り袋」に千円札が入ったことも!? 朝日新聞の大相撲担当記者が、エピソードを交え、大相撲のウンチクを紹介。観戦がますます楽しくなるかも。

◇第1章 番付書きは極秘ミッション
◇第2章 歴代番付表、違い分かる? 緊張の清書ウラ話
◇第3章 午後6時キッカリに終わる凄技 ほうきも活躍
◇第4章 黒・青・赤・白 土俵見守る4色の房のお話
◇第5章 力士の土俵入り、なぜ東と西? 実際の方角は…
◇第6章 白鵬不戦勝…手取り120万円分の懸賞はどこへいく?
◇第7章 相撲協会の「大入り袋」 普段は10円玉、記念日には…
◇第8章 しいたけトロフィー、親方もうなる味 最高級品びっしり
◇第9章 伊之助の軍配「譲り団扇」 表面の漢字、解明できない謎
◇第10章 きょうの懸賞、この取組に決めた ファンが選ぶ森永賞
◇第11章 土俵中央の仕切り線、実は昭和生まれ ラジオ中継が契機
◇第12章 大相撲「顔ぶれ」の紙はどこへ行く? 知られざる実入り
◇第13章 引き継がれた塩まき 力士が「魂をもらった」言葉とは


第1章 番付書きは極秘ミッション

 中央に大きく「蒙御免」(ごめんこうむる)と書かれた番付表。相撲好きな方でしたら、手にとってご覧になった方も多いかと思います。部屋や力士の後援会に入会している方なら、きちっと畳まれ、力士や師匠の判子が押された番付表が場所ごとに自宅に届いていることでしょう。


 この番付表は、実は平日の国技館に行けば、誰でも1枚55円で買うことができます(番付発表から数日で売り切れることもありますが)。今場所の番付表は、なんと38万部も印刷されています。1人の行司が手書きした原本を縮小印刷したものです。いまは三役格で、行司の序列で上から4番目の木村恵之助さんが1人で書いています。
 行司の仕事は別の機会に改めて書こうと思いますが、行司は「土俵での裁き」だけが仕事ではありません。特に大切とされているのが、日本相撲協会の会議などでの書記役です。
 そんな書記役をこなす中で、毛筆が特に上手な行司さんが「番付の書き手」に選ばれます。
 番付表は木村恵之助さんが1人で書き上げるんですが、ほかに2人の補佐役がつきます。木村要之助さんと、木村勘九郎さんがその補佐役です。この2人は新番付が決まると、漏れた力士がいないか、東西の誰がどの番付に動いたのかなどをチェックします。そして、完璧な資料を作り「書き手」である恵之助さんに渡します。同時に、番付表の枠線を墨で書くのも2人の仕事です。
 こうして、枠線が引かれた大きな紙(縦110センチ、横80センチ)と、番付の全資料を手渡された恵之助さんは、自宅で毎日何時間も半月にわたって番付書きに没頭します。
 国技館で、黒い筒を背負って帰ろうとする恵之助さんとすれ違いました。「原本ですか?」って聞いたら、「はい」と緊張した面持ちで帰っていきました。
 新番付は、実は、千秋楽の3日後に決まっています。でも、その情報は約1カ月の間、極秘扱いです。番付の書き手は、極秘情報を紙に記すので、口の軽い人では務まりません。
 こうして、恵之助さんは孤独な番付書きの仕事にあたるんですが、書き損じたら、どうするのか。どんな練習をして番付の書き手になったのか。あの相撲字は誰が書いても同じなのか――・・・

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