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教育・子育て
朝日新聞社

手話だって「ことば」です 偏見と無理解を乗り越えて

初出:2015年5月30日
WEB新書発売:2015年7月9日
朝日新聞

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 2015年4月、群馬県前橋市の県立ろう学校を訪ねると、先生と児童が手話を使って、歌を歌ったり、会話をしたりしていた。一見、当たり前の光景のようだが、実は違う。日本の教育現場では、長い間、手話は「思考力が育たない」「文法的に劣ったもの」とみなされ、使用が禁止されてきたのだ。1990年代に潮目が変わり始め、13年に鳥取県、15年に群馬県で手話言語条例が制定された。学術研究により手話が「言語」であるという証拠が示され、聴覚障害者が生きるためのコミュニケーション手段として手話が重要だ、という認識が広まったためだ。手話が「言語」として認められるまでの取り組み、「第2言語」としての活用など、あまり知られていない手話の現状をレポートする。

◇「手話は言語」着実に浸透
◇「第2言語」は手話/大学で進む開講


「手話は言語」着実に浸透

◎声と一緒に使って歌も
 2015年4月下旬、前橋市天川原町1丁目の県立聾(ろう)学校幼稚部の教室で、園児らが手話をしながら声を出して歌っていた。
 幼稚部には、幼稚園の年少から年長にあたる3〜5歳の園児22人が在籍し、大半は補聴器を着けている。そのうち半数ほどは、音のテンポなどは分かるが、高低の違いなどは聞き分けられないという。先生たちも言葉と同時に手話を使って歌った。
 聾学校で手話――。一見、当たり前に思える光景だが、実はこれまではほとんど手話は使われてこなかったという。幼稚部で手話を必ず付けるようになったのは、県手話言語条例が施行された15年4月からだ。
 日本では大正時代以前は手話が使われていたが、1933年に当時の鳩山一郎文相が、日本語の発音訓練を中心とする「口話教育推進」の訓示をしたことで、全国の聾学校では口話法が主流となった。手話は「思考力が育たない」「文法的に劣ったもの」との偏見から使用が禁止された時代が長く続いた。


■県手話言語条例
 15年2月議会に議員提案され、全会一致で可決された。前文で「手話は言語であり、ろう者の思考や意思疎通の際に用いられている」とうたっている。条例文の作成には複数の聴覚障害者がかかわった。
 条文は全16条からなり、ろう教育の問題に細かく触れた12条が最大の特徴だ。ろう児が乳幼児期から手話を学ぶための教育環境の整備、ろう児やその保護者に対する手話の学習や機会の提供、手話に通じた教員の確保や専門性の向上に努めること――などを県に求めている。他県では、13年に全国で初めて鳥取県が手話言語条例を作っている・・・

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