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経済・雇用
朝日新聞社

太陽光バブルはなぜ崩壊したのか 買取制度導入3年後の現実

初出:2015年7月2日〜7月4日
WEB新書発売:2015年7月16日
朝日新聞

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 国は2012年7月、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を導入した。太陽光や地熱、小火力などの再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社に買い取らせる制度だ。買い取り価格が高く、効率のよい太陽光発電は「簡単にもうかるビジネス」(関係者)として爆発的な数の参入があったが、いま、大きな岐路に立たされている。制度の問題点は何か? 再生可能エネルギーの今後はどうなるのか? 電力会社の事情、技術的条件なども踏まえ、九州から現地報告する。

◇第1章 太陽光バブル崩壊
◇第2章 地熱、にわかに熱く
◇第3章 小水力、各地に適所


◇第1章 太陽光バブル崩壊

◎「九電ショック」誤算
 佐賀市を東西に走る有明海沿岸道路。田植えを終えた水田が周囲に広がる道路の盛り土の斜面が、約2キロにわたり緑色のシートで覆われたままになっている。
 建設コンサルタント業のオリエンタルコンサルタンツ(東京)などが、太陽光パネルを敷き詰めて発電を始めるはずだったが、2014年秋から工事が中断している。
 九州電力が14年9月24日、太陽光など再生可能エネルギーの新たな買い取り手続きの中断を発表したことで、計画は暗礁に乗り上げた。
 関係者は「九電ショック」と振り返る。


 国は2012年7月、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)(※)を導入した。日射量が多く、土地も比較的安い九州では、太陽光発電は「簡単にもうかるビジネス」(関係者)として爆発的に広がった。FIT導入後の再生エネの98%を太陽光が占める。


◎普及にブレーキ
 だが、太陽光の買い取り抑制の方針が示された「九電ショック」で、普及に急ブレーキがかかっている。
 オリエンタルコンサルタンツ(東京)は、佐賀県から無料で借りる約1万平方メートルの道路の斜面に3900枚の太陽光パネルを設置し、出力1千キロワットの発電を始める計画を立てていた。年間発電量は一般家庭340世帯分にあたる120万キロワット時。売電収入は年間約4千万円とはじいていたが、担当者は「採算が見通せなくなった」と嘆く。収益の一部を除草などの道路管理に回す全国初の官民連携の計画に県も期待を寄せていたが、工事再開の見通しは立っていない。
 九電は15年1月、電力が余る場合は事業者に太陽光発電を止めてもらう「出力抑制」を無制限・無補償でできるようにして、新たな買い取り手続きを再開した。
 ただ、出力抑制が増えれば、売電収入は減る。このため、投資に二の足を踏む事業者が増えている。
 九電の送電線に接続する契約の申請件数は、15年4月は約800件。前年同月に比べて9割近く減った。「太陽光バブルは崩壊した」と関係者は口をそろえる。
 太陽光発電システムの施工を手がけるサニックス(福岡市)は、この3年間で売上高が3倍に膨らむ急成長を遂げたが、一転して大規模なリストラを迫られた。九州の営業所24カ所のうち11カ所を廃止し、15年6月に全社員の2割弱にあたる609人が希望退職した。

◎安定供給に支障
 太陽光の普及に「待った」をかけた九電にも事情がある。発電量が天候に左右されるため、増えすぎると電力の安定供給に支障が出るというのだ。
 6月2日。九電の中央給電指令所(福岡市)に緊張が走った・・・

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