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朝日新聞社

28歳記者、球児になる 富山第一、ノルマは「米6合」

初出:2015年6月23日〜6月29日
WEB新書発売:2015年7月16日
朝日新聞

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 大学まで陸上競技の中距離で鍛えてきたが、野球は初心者。運動不足も否めない。「ジュースとお菓子は禁止」「そして米をしっかり食べて」。食べるご飯の量は身長で決められ、言い渡されたのは「1日6合」。満身創痍の初日、体重は1キロ減っていた。強豪・富山第一で、高校球児とみっちり特訓を受けた7日間の体験入部ルポ。

◇第1章 [入部]28歳、初めての練習着
◇第2章 [守備]内外野、ノックに挑む
◇第3章 [鍛錬]バーベル使い、体作り
◇第4章 [投手]一心不乱に腕を振る
◇第5章 [裏方]試合の進行、滞りなく
◇第6章 [打撃]無心で500球、皮むける


第1章 [入部]28歳、初めての練習着

◎「年近い」必死に自分を鼓舞
 富山第一の野球部に体験入部する初日。人生で初めて、野球の練習着に袖を通した。ベルトを締め、長い靴下を履き、帽子をかぶる。見慣れぬ自分の姿に何となく落ち着かない。午後3時半、恐る恐るグラウンドに出ると、「似合ってますよ」。取材で旧知の黒田学監督(34)が励ましてくれた。
 円陣の中央に入ってあいさつする。大学までは陸上競技の中距離で鍛えてきたが、野球は初心者。記者生活は4年目に入り、運動不足も否めない。でも、まだ28歳。「球児たちと年が近い」と必死に自分を鼓舞した。


 部員は全部で80人。レギュラー中心のA班(約30人)と1、2年生中心のB班(約50人)に分かれ、それぞれが投手と野手に分かれて練習している。まずは、夏の後を見据えた体作りに力を入れるB班の野手組に加わった。
 「ジュースとお菓子は禁止です」。サポート役の福沢壮(ふくさわたけし)君(3年)からは早速、部員の心得を説かれた。余計な糖分を取らないため。大好きな炭酸飲料も当然禁止だ。
 そしてもう一つ、「米をしっかり食べてください」。部員全員が、身長を元に1日に食べるご飯の量を決めており、172センチの私は約6合。一人暮らしで、白米を食べない日もある身には、途方も無い量だ。
    ◇
 野球部のウォーミングアップと言えば、隊列を組んだランニング。「イッチ、ニー!」「ニー、ニッサン!」。低くてよく通る声が響く。
 「声がそろっている時は、選手たちが同じ方を向いて隙がない。非科学的かもしれないが、野球をやる上でバロメーターになる」と黒田監督。一緒に声を合わせてみると、自然と気合が入る。個人での準備運動が基本だった陸上競技では味わえなかった新鮮な感覚だ。
 しかし、声が小さかったりバラバラだったりすると、すぐにスタートからやり直し。「練習への準備として重要なので、出来ていない時はやり直します」と学生コーチの藤田健(たける)君(3年)。走る距離が延びていく。
 その後、キャッチボール、ノック、トスバッティング、盗塁練習、筋力トレーニングと進むにつれ、息が切れ、筋肉痛で足がふらつく。駆け足での移動もこたえる。ひざに手をあて、肩で息をする姿に「大丈夫ですか?」「無理したらダメですよ」。部員たちのいたわりに「大丈夫…じゃない」と本音が漏れる・・・

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