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文化・芸能
朝日新聞社

おこめのようなアナウンサー 元NHK・山川静夫さんの半生記

初出:2015年6月22日〜7月3日
WEB新書発売:2015年7月23日
朝日新聞

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 NHK元アナウンサーの山川静夫さんは、軽妙洒脱な話しぶりと司会術で人気を呼び、長年にわたって「NHKの顔」として活躍、歌舞伎の評論などで知られる名エッセイストでもある。テレビが一番元気だった時代、「ひるのプレゼント」「紅白歌合戦」「ウルトラアイ」「トライ&トライ」「くらべてみれば」などの人気番組で視聴者に強い印象を残した名アナウンサーの「メディアへの愛」にあふれたインタビュー。

◇第1章 おこめのようなアナウンサーがいい
◇第2章 松の木に登って草野球を実況
◇第3章 歌舞伎に魅せられ、学んだ間合い
◇第4章 十七代目勘三郎の黒衣で舞台に
◇第5章 鍛えたマイクにのる声、夢つかむ
◇第6章 おでん屋の名物親父に学んだ話し方
◇第7章 上方の芸能、触れてひたって財産に
◇第8章 忘れもしない紅白歌合戦の重圧
◇第9章 何でもあり、体を張った「ウルトラアイ」
◇第10章 アナウンサーのあり方、正解いろいろ


第1章 おこめのようなアナウンサーがいい


――最近は、どんなテレビをご覧になりますか。

 必要最低限の番組だけです。朝は4時すぎに起きて散歩に出かけ、夜は9時に寝てしまいますから。それ以降の番組は、気になるものがあれば録画して見ます。テレビ東京の、なんでも鑑定団はよく見ます。NHKの娯楽番組も見ることは見ますが、どの放送局でも見られるようなタレントが司会をしていて、アナウンサーはアシスタント役として、わきにまわされている。あれならNHKでなくてもいいわけで、昔を知る者としては抵抗を感じます。

――アナウンサーが主役に返り咲くには、どうすれば。

 アナウンサー自身が魅力的になることでしょう。そのためには多くの人に会う。経験を重ねる。人間として成長する。目先ばかりを見て、すぐに結果を求める現代社会では難しいでしょうが、そこは今も昔も変わらないと思います。先輩アナウンサーの小川宏さんは「おこめのような人」になるべきだと言っていました。毎日見ても嫌みがない、あきない人。そうなるには時間が必要です。

――今のアナウンサーで良いと思う人はいますか。

 いろいろ、いると思いますよ。最初は「いいなあ」と思った人が、だんだん嫌みに見えたり、はじめはパッとしなかった人でも見続けるうちに好きになったり。つまり「人間性」がからんできます。原稿を読むだけの機械ではいけませんね。

――反対にダメなのは。

 例を出すなら若いころのぼくです。宮田輝さんという大先輩に対抗して、機関銃のように話そうとした。人は宮田さんを「重厚」というけれど、「重厚」とは進歩がとまった状態で「軽薄」にこそ進歩の可能性があると強がりました。だけど宮田さんが正しかったんです。ゆったりした口調で「おばんでございます」。その人柄もあいまって、視聴者は信頼した。視聴者は見抜くんです。それに気づくのに、ぼくは時間がかかりました・・・

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