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朝日新聞社

「上空から見るならいいだろう」 東日本大震災・福島原発と天皇陛下

初出:2015年7月3日〜7月16日
WEB新書発売:2015年7月30日
朝日新聞

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 東日本を中心に未曾有の大被害をもたらした東日本大震災。天皇陛下は、発生から19日後の東京都足立区の避難所を皮切りに、5月までに茨城、宮城、岩手、福島各県の被災地を立て続けに回った。原発を見たいという意向を側近に告げ、「それは無理です」と言われると、「自衛隊の飛行機で上空から見るならいいだろう」と言葉を継いだ、とされる。菅直人元首相ら関係者に話を聞き、雲仙・普賢岳(長崎県)の噴火なども含め、被災地を見舞った天皇、皇后両陛下の足取りをたどる。

◇第1章 異例の訪問、込めた意思は
◇第2章 上空からでも原発を見たい
◇第3章 なるべく早く見舞いたい
◇第4章 コウナゴ漁への影響は
◇第5章 東北へ、移動手段はどうする
◇第6章 津波の教訓に深い関心
◇第7章 ビデオメッセージ、自ら実践
◇第8章 核心ふれる質問に絶句
◇第9章 「陛下の隣に」突然のお言葉
◇第10章 記憶する、変わらぬ意志


第1章 異例の訪問、込めた意思は

 「プロメテウスの罠」は福島原発事故を共通テーマとする。しかし私には、もうひとつの関心事があった。東日本大震災に際して天皇、皇后両陛下がどのように被災地を見舞ったのか、である。
 春の「全国植樹祭」と秋の「国民体育大会(国体)開会式」、「全国豊かな海づくり大会」の三つは、両陛下が毎年出席する「三大行幸啓」と呼ばれる。開催地の都道府県が2年ほど前から準備を重ね、宮内庁や警察も開催地を何度も下見して分刻みで日程を組む。両陛下は開催地がお膳立てした場所をそのまま訪問するのが基本だ。
 だが東日本大震災では、発生から19日後の2011年3月30日に東京都足立区の避難所を訪れ、4月8日には埼玉県加須(かぞ)市の旧騎西(きさい)高校に避難している被災者を見舞った。震災からほぼ1カ月後の4月14日には被災地である千葉県旭市を訪問し、5月までに茨城、宮城、岩手、福島各県の被災地を立て続けに回った。


 訪問は現地からの願い出よりも両陛下の意向が強く反映された。準備期間が1週間ほどしかないこともあった。被災者は体育館などに避難している。交通手段や警備態勢、服装や食事などあらゆることが、恒例の地方訪問とは違う異例の対応となる。
 こうした被災地訪問をたどることで、災害に際して両陛下がどのような意思を示したかが浮き彫りになるのではないか。そう私は考えた。
 そのためには、東日本大震災以前の災害に際して、両陛下がどう振る舞ってきたかを追うことも不可欠だ。だがまず、東日本大震災から話を始めることにしよう・・・

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