政治・国際
朝日新聞社

徹底検証:安保法制審議 なぜ国民は「十分に理解」できないのか

2015年08月06日
(7200文字)
朝日新聞

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 2015年7月16日、衆議院本会議で可決、通過した安全保障関連法案。安倍晋三首相自身が、「国民が十分に(法案を)理解している状況ではない」と認める中での採決だった。論戦の舞台は参議院に移ったが、なぜ、国民の理解は深まらなかったのか、「砂川判決へのこだわり」「中東・ホルムズ海峡での機雷除去」「朝鮮半島有事での米艦保護」「自衛隊のリスク増大」「あいまい答弁」などのポイントについて、徹底検証してみる。

◇第1章 砂川判決、依存深める政権
◇第2章 武力行使の条件、答弁迷走
◇第3章 自衛隊リスク増、明言せず
◇第4章 答弁あいまい、議論平行線


第1章 砂川判決、依存深める政権

違憲指摘、反論の「根拠」
 砂川事件をめぐる1959年の最高裁判決は、集団的自衛権の行使を認める安保関連法案の「根拠」になるのか――。このことは違憲性が指摘された法案の審議で焦点の一つとなった。
 2015年5月に始まった法案審議で、安倍政権は当初、集団的自衛権の行使を認める根拠を砂川判決に求める姿勢を取っていなかった。むしろ政権が行使容認を支える論拠としたのは、「必要最小限度の自衛権行使は憲法上認められる」とする1972年の政府見解だ。
 状況を一変させたのは、6月4日の衆院憲法審査会での参考人質疑だった。
 「集団的自衛権の行使が許されるというのは憲法違反。(解釈変更は)法的な安定性を揺るがす」。自民推薦の長谷部恭男・早大教授ら憲法学者3人は法案を「違憲」と指摘。結論部分で集団的自衛権の行使を否定した72年見解を法案の根拠とする政権を批判した。
 劣勢を挽回(ばんかい)しようと、政権内からは「憲法解釈の最高権威は最高裁。憲法学者でも内閣法制局でもない」(稲田朋美・自民党政調会長)といった声が目立つようになった。法律の違憲審査権をもつのは最高裁で、憲法学者の批判より重いという主張だ。この時から政権は砂川判決を再三持ち出すようになる。
 安倍晋三首相は15年6月8日、外遊先のドイツでの会見でこう強調した。「今回の憲法解釈の基本的論理は、砂川判決と軌を一にするものだ。(法案は)最高裁判決に沿ったものであることは明確だ」
 中谷元・防衛相や横畠裕介・内閣法制局長官も国会で法案の合憲性を問われると、「砂川判決と軌を一にするもの」と繰り返した。ただ、中谷氏は6月15日の衆院特別委で「砂川判決を直接の根拠としているわけではない」と答弁するなど、判決=根拠とまでは踏み込んでいなかった。
 しかし批判が高まるなか、首相は砂川判決への「依存」を深めていく・・・

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徹底検証:安保法制審議 なぜ国民は「十分に理解」できないのか
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2015年7月16日、衆議院本会議で可決、通過した安全保障関連法案。安倍晋三首相自身が、「国民が十分に(法案を)理解している状況ではない」と認める中での採決だった。論戦の舞台は参議院に移ったが、なぜ、国民の理解は深まらなかったのか、「砂川判決へのこだわり」「中東・ホルムズ海峡での機雷除去」「朝鮮半島有事での米艦保護」「自衛隊のリスク増大」「あいまい答弁」などのポイントについて、徹底検証してみる。[掲載]朝日新聞(2015年7月14日〜7月19日、7200字)

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