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朝日新聞社

原発ゼロでも電力ゆとり 節電コツコツ+太陽光10倍

初出:朝日新聞2015年7月31日、8月8日、8月15日
WEB新書発売:2015年8月27日
朝日新聞

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 猛暑日が続いた2015年夏。すべての原発は止まったままだったが、電力供給にはゆとりがあった。なぜなのか。太陽光発電の導入量はこの5年間で10倍に増え、電力需要は節電の取り組みで十数%減っているのだ。エスカレーターを一部止める・冷房設定は28度・自動販売機は夜に冷やす――。省エネに徹底的に取り組む実験コンビニもある。そんな中、川内原発は8月11日に再稼働、「原発ゼロ」は1年11カ月で終わった。

◇猛暑でも電力安定
◇太陽光、ピーク時肩代わり
◇川内原発、発送電を開始
◇省エネ至上コンビニ


猛暑でも電力安定

太陽光発電、導入量10倍/節電効果、需要十数%減
 東京都心で2015年8月7日、最高気温35度以上の「猛暑日」が過去最長の8日連続となるなど、各地で記録的な猛暑が続くなかで、大手電力各社は比較的余裕のある電力供給を続けている。すべての原発は止まったままだが、太陽光発電の普及や節電の定着で、真夏の電力不足の心配は遠のいている。

 電力供給にどれだけ余裕があるかは、その日の電気の供給力と、一日で最も電力の需要が多いピーク時を比べた「最大電力使用率」でわかる。東京電力や関西電力の場合、これが90%以上だと電力の余裕が「やや厳しい」、95%以上だと「厳しい」とされる。
 8月7日までの1週間で、東京、中部、関西、九州各電力の最大使用率をみると、95%以上になったのは1日の中部電だけだった。東電では90%以上が4日あり、あとは90%未満の「安定的」だった。
 関電と九電は震災前に原発依存度が高く、15年夏も綱渡りの供給が心配されたが、この1週間、関電で90%以上となったのは8月3日の1日だけ。九電はゼロだ。やはり猛暑だった13年、関電は7〜8月の2カ月間で90%以上が22日間あり、最大使用率が96%に達した日もあった。


 余裕ができた背景には、電力供給の変化がある。
 東日本大震災後、安定した電力の供給源だった原発が止まったことで、電力各社は老朽化で止めていた火力発電所もフル稼働するなどして供給力を維持したが、夏場の電力需要のピーク時の供給には不安があった。だが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)のもと、太陽光発電の導入量がこの5年間で10倍近くに急増。晴れた日に発電量が多くなる太陽光が夏のピークに対応し、電力供給の安定につながっている。
 一方で、夏のピーク時の電力需要も、震災前と比べて十数%ほど少ない。LED照明への切り替えなど、企業や家庭で節電の取り組みが広がっているためだ。
 九電は15年8月11日にも、川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働をめざしている。猛暑続きでも電力供給にゆとりがある日々が続いていることは、再稼働の是非をめぐる議論にも影響しそうだ。


太陽光、ピーク時肩代わり

夏の電力需給/猛暑、晴れて本領
 真夏の昼間はエアコンなどで電力使用が1年で最も多くなる。2015年は記録的な猛暑が続き、国内では原発がまだ1基も動いていないのに、電力各社はなぜ余裕のある電力供給を続けていられるのだろうか。

 東日本大震災後に原発が止まり、原発をもたない沖縄を除く大手電力各社は、コストが高く老朽化した石油火力発電所を動かすなど、おもに火力発電で供給力をカバーしてきた。その分、燃料費がかさんで業績が悪化。電気料金の値上げに動く会社が相次いだ。
 電力各社は、電力需要のピーク時に対応できるように、火力発電所の定期点検をいまも繰り延べている。15年4月時点で、前回の点検から2年以上経った火力は全体の2割強にあたる70カ所あり、うち5カ所は4年を超える。
 そこで、夏のピーク時の電力供給を補う存在になりつつあるのが太陽光発電だ。太陽光は天気に左右される不安定な電源とされるが、猛暑の日はまず晴れており、電力の供給面では頼りになる。天気が悪くなれば出力は落ちるが、その分、気温も下がって電気の需要も減る。
 太陽光発電協会の穂岐山孝司・広報部長は「夏の電力需要の動きにあった電源。同じ再生可能エネルギーでも風力発電とは違う特徴だ」と話す。
 12年に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が始まると、家庭用のパネルや、企業が電気を売る目的でつくるメガソーラーが一気に増えた。風力やバイオマス発電などと比べ、太陽光発電はパネルを設置するだけで始められ、電力の買い取り価格も高かった。
 国内の太陽光の導入量は、震災前の10年3月末に約280万キロワットだったが、15年3月末には約2700万キロワットと9・5倍に伸びた。実際の出力はその6〜7割程度に下がると計算しても、増加分だけで原発十数基分ともいえる・・・

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原発ゼロでも電力ゆとり 節電コツコツ+太陽光10倍
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猛暑日が続いた2015年夏。すべての原発は止まったままだったが、電力供給にはゆとりがあった。なぜなのか。太陽光発電の導入量はこの5年間で10倍に増え、電力需要は節電の取り組みで十数%減っているのだ。エスカレーターを一部止める▽冷房設定は28度▽自動販売機は夜に冷やす――。省エネに徹底的に取り組む実験コンビニもある。そんな中、川内原発は8月11日に再稼働、「原発ゼロ」は1年11カ月で終わった。[掲載]朝日新聞(2015年7月31日、8月8日、8月15日、5700字)

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