教育・子育て
朝日新聞社

教養なんていらないの? 文系大学改編で問われる新時代の姿

初出:朝日新聞2015年8月18日〜8月21日
WEB新書発売:2015年9月3日
朝日新聞

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 「教養」をめぐり、何かが変わりつつある。2015年6月に文部科学省が国立大学の人文社会科学などの学部・大学院について、「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」よう見直しを迫ったことをきっかけに、人文社会科学系学部などが担っていた「教養」のあり方について、議論が沸き起こっている。教養とは何か。本当に必要なのか。教養を疑うことから、「現代の教養」を考えてみる。【登場する人々=敬称略】川上量生(KADOKAWA・DWANGO社長)、冨山和彦(経営共創基盤CEO)、高橋みなみ(AKB48)、佐渡島庸平(編集者)、島田晴雄(千葉商科大学長)、広田照幸(日本大教授)、永江朗(フリーライター)、山田洋次(映画監督)、鈴木敏夫(プロデューサー)、東浩紀(思想家)など。

◇第1章 世につれ、人につれ…
◇第2章 「パンキョー」衰退の先に
◇第3章 インテリ嫌いの寅だけど
◇第4章 知りたい衝動に応える


第1章 世につれ、人につれ…

◎IT教育こそ「社会的ニーズ」
 ネット上で新しいサービスを繰り出してきた企業が教育事業への参入を表明し、話題になっている。「ニコニコ動画」などで知られるKADOKAWA・DWANGO(カドカワ・ドワンゴ)の川上量生(のぶお)社長(46)が、ネットで授業を受けられる通信制高校を2016年にも開校する構想を、15年7月に発表した。プログラミングなどのIT教育に力を入れるという。


 「今までの教育カリキュラムは、想定されている『教養』が現実に合っていないんですよ。そこを埋める社会的ニーズがある」
 教養とは、「ある時代や集団内でコミュニケーションをするのに最低限必要だとされている知識。レベルの高い議論をするのに必要な共通言語だ」と考える。
 大量のデータを扱う場面も多いネット社会で、数学やプログラミングこそ現代版教養だと考える。それが文系からは軽視されていることが不満だ。アリストテレスの古典「詩学」をコンテンツ論として絶賛するなど、文系的教養を軽んじるわけではない。ただ人文系の研究への視線は厳しい。
 「人工知能で脳の動きがある程度シミュレーションできるようになり、文学的・芸術的と思われていた人間の行動や作品が情報処理的に解釈可能な時代になった。日本の人文系の研究は、そうした技術を使いこなしているでしょうか」
    *
 実際、人文系の「教養」は危機にさらされている。
 15年6月に文部科学省が国立大学の人文社会科学などの学部・大学院について、「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」よう見直しを迫ったのだ。大学教員らは「現実の問題に対処できる教養は人文系の学問で育つ」「あらゆる組織を目先の金もうけの道具にすれば、国の競争力は弱まる」などと反論している。
 哲学、文学、歴史などの人文知は、長く旧来的な教養の「奥の院」だったはずだ。しかし木枯らしが吹き込む。昔ながらの教養は、もういらないのだろうか。
 「真の実践力の前提となる『人間力』を鍛えるには、まず分野ごとの基礎実学をたたき込んだ上で、長期インターンなどを経験し、リアルな社会問題の現場で悩んだ方が、教室で『教養ごっこ』をするよりはるかに有効だ。シェークスピアもそういう経験をしてから勉強させれば若者の心に響き、腹に落ちる・・・

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この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

教養なんていらないの? 文系大学改編で問われる新時代の姿
216円(税込)
  • 著者高重治香、石飛徳樹、大西元博、塩原賢、高津祐典、守真弓、吉川一樹
  • 出版社朝日新聞社
  • 出版媒体朝日新聞

「教養」をめぐり、何かが変わりつつある。2015年6月に文部科学省が国立大学の人文社会科学などの学部・大学院について、「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」よう見直しを迫ったことをきっかけに、人文社会科学系学部などが担っていた「教養」のあり方について、議論が沸き起こっている。教養とは何か。本当に必要なのか。教養を疑うことから、「現代の教養」を考えてみる。【登場する人々=敬称略】川上量生(KADOKAWA・DWANGO社長)、冨山和彦(経営共創基盤CEO)、高橋みなみ(AKB48)、佐渡島庸平(編集者)、島田晴雄(千葉商科大学長)、広田照幸(日本大教授)、永江朗(フリーライター)、山田洋次(映画監督)、鈴木敏夫(プロデューサー)、東浩紀(思想家)など。[掲載]朝日新聞(2015年8月18日〜8月21日、8200字)

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