政治・国際
朝日新聞社

「ノー・ジャパン」 自衛隊イラク派遣の修羅場

2015年09月03日
(7900文字)
朝日新聞

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 かつてイラク・サマワなどに派遣された自衛隊。当時、政府は「非戦闘地域の安全な場所に派遣する」と説明していたが、実際には危険と隣り合わせの場面もあった。ある祝賀式典で、自衛隊を警護していた豪州軍と反米武装勢力が銃撃戦を展開、群衆が「ノー・ジャパン」などと叫びながら押し寄せ、ある自衛隊員は「みんな右往左往していた」という。現在、安全保障をめぐる議論が盛んだが、この時の自衛隊イラク派遣について考えた。

◇第1章 銃声、群衆が陸自包囲/「非戦闘地域」すら危険
◇第2章 武器・作戦、他国軍と密接
◇第3章 誤射、裁かれるのは隊員


第1章 銃声、群衆が陸自包囲/「非戦闘地域」すら危険

◎撃てば戦闘――サマワ駐留隊員恐怖
 自衛隊初の「戦地派遣」となったイラクで、隊員たちは危険と隣り合わせの活動を強いられた。政府は当時、「一人の犠牲者も出さなかった」と安全性を強調したが、実際は隊員が銃を撃つ判断を迫られるなどの事態が起きていた。陸上自衛隊が2008年に作った内部文書「イラク復興支援活動行動史」や関係者の証言で明らかになった。新たな安全保障関連法案では活動範囲がより拡大し、危険はさらに高まる。

 突然、銃撃音と怒声が響いた。自衛隊が駐留したイラク南部サマワから約30キロ離れた街ルメイサ。活動開始から2年近くになる05年12月4日、復興支援群長の立花尊顕(たかあき)1佐ら幹部たちはムサンナ県知事らと、修復した養護施設の祝賀式典に参列していた。
 発端は、会場のそばで起きた反米指導者サドル師派と、自衛隊を警護していた豪州軍の銃撃戦だった。サドル師派は頻繁に多国籍軍を襲撃し、自衛隊も「占領軍」と敵視した。会場内の陸自幹部たちは「ただ事ではすまない」と青ざめた。
 銃撃戦に続き「ノー・ジャパン」などと抗議しながら押し寄せた群衆の渦は、100人前後に膨らんだ。幹部らは建物に閉じ込められ、外で警備にあたっていた十数人の隊員は群衆に包囲された。車両に石を投げつける男、ボンネットに飛び乗って騒ぐ男、銃床で車の窓をたたき割ろうとする男までいた。


 「どうすべきかわからず、みんな右往左往していた」と当時の隊員は話す。
 群衆の中には銃器をもつ男たちもいた。もし銃口が自分たちに向けられたら――。政府が認めた武器使用基準では、まず警告し、従わなければ射撃も可能だ。
 「ここで1発撃てば自衛隊は全滅する」。どの隊員も、1発の警告が全面的な銃撃戦につながる恐怖を覚えた。「撃つより撃たれよう」と覚悟した隊員もいた・・・

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「ノー・ジャパン」 自衛隊イラク派遣の修羅場
216円(税込)

かつてイラク・サマワなどに派遣された自衛隊。当時、政府は「非戦闘地域の安全な場所に派遣する」と説明していたが、実際には危険と隣り合わせの場面もあった。ある祝賀式典で、自衛隊を警護していた豪州軍と反米武装勢力が銃撃戦を展開、群衆が「ノー・ジャパン」などと叫びながら押し寄せ、ある自衛隊員は「みんな右往左往していた」という。現在、安全保障をめぐる議論が盛んだが、この時の自衛隊イラク派遣について考えた。[掲載]朝日新聞(2015年8月20日〜8月22日、7900字)

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