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教育・子育て
朝日新聞社

人間ピラミッド、何のため? ショー化する運動会にNO

初出:2014年10月5日〜2015年9月2日
WEB新書発売:2015年9月17日
朝日新聞

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 「運動会の華」といわれる組み体操。10段のピラミッドだと高さ7メートルになる。全国で骨折などの事故があり、けがの多さもさることながら、問題は頸部や腰部など体幹部の比率が高いこと。後遺症が残った事例は10年間で20件あったという。「見栄えより子どもの安全を優先すべき」という意見が強まり、2015年に入り、巨大化に歯止めをかける動きが出てきた。大阪市教委は「上限5段」に。見直しは広がるか。

◇第1章 安全さぐる組み体操
◇第2章 体育で何を鍛えるか
◇第3章 人間ピラミッド
◇第4章 運動会の「ピラミッド」巨大化、歯止めの動き


第1章 安全さぐる組み体操

◎人気のピラミッド
 「人間ピラミッド」にどう取り組むか。運動会や体育祭で注目を集める組み体操をめぐり、議論が起きている。人気が高いピラミッドなどで事故も起きており、取り組み方によっては危険性もあるためだ。自治体や学校は教育効果と安全性を考慮しながら、注意喚起したり、高さを抑えたりする試みを進めている。

 頂点に立った6年生の男子が、誇らしげに両手を横に広げる。立体型の6段の「人間ピラミッド」が完成し、保護者らから大きな拍手が起こった。福岡県の小学校で2014年9月末にあった運動会で、午前のクライマックスに披露された。
 ピラミッドは見栄えもよく、人気が高い。最下段の人は四つんばいになり、2段目以上は人数を減らしながら、下の段の人の背中に乗っていく。
 中学校や高校では2〜3階建ての建物の高さに匹敵する10〜11段に挑むケースもある。高いものは、100人以上でつくりあげる。インターネット上で立体型の組み方が広まったこともあって、近年各地で高いピラミッドに取り組む例も目立ってきた。
 生徒らがチームワークでつくるものだけに、成功時の達成感を評価する声は多い。熊本県立熊本工業高校(熊本市)の3年生、浦中俊吾さん(17)は13年の体育祭でピラミッドを最下段で支えた。「自分の役割の重要性がわかる種目。気を抜けば危険だし、簡単ではないけど、だからこそ成功した時の達成感が大きい」
 だが、事故は少なくない。14年5月には熊本県の中学校で、練習中に8段ピラミッドが崩れ、最下段の男子生徒が腰椎(ようつい)骨折の重傷を負った。福岡県立高校でも1990年、練習中に最下段の3年生男子が頸椎(けいつい)を損傷し、全身まひになった。
 熊本県立高の男子生徒の50代の母親は「息子はピラミッドの最下段を務めたが、嫌がっていた。腕力や体力はないので、ぐらついてヒヤヒヤした」と話す。


 名古屋大の内田良准教授(教育社会学)が、学校で負ったけがの医療費給付を担う日本スポーツ振興センターのデータを分析した結果、小学校の組み体操での事故は11年度5976件、12年度6533件。跳び箱、バスケットボールに次ぎ、3番目に多かった・・・

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