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政治・国際
朝日新聞社

独裁と繁栄の間 ミャンマー総選挙リポート

初出:2015年9月9日〜9月13日
WEB新書発売:2015年10月1日
朝日新聞

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 ミャンマーでは2015年秋、上下両院の総選挙が行われている。民主化を訴えてきたアウンサンスーチー氏率いる最大野党が、旧軍政系の与党と正面から争うのが焦点だが、少数民族や宗教の問題もあって政治状況は複雑だ。一方、同国の工業団地には日系を含む多くの外国企業が入居する。他国の人件費上昇などで人気が集まるミャンマーだが、民主化や改革が後退しないかどうか、外国企業はかたずをのんで選挙を見守っている。

◇第1章 ミャンマー、試される変革
◇第2章 排除されるイスラム教徒
◇第3章 沸く経済、恩恵は一握り
◇第4章 行政・経済、根強い軍支配
◇第5章 なお危うい言論の自由


第1章 ミャンマー、試される変革

◎外国監視団初受け入れ
 ミャンマーの総選挙は2015年9月8日、11月8日の投票に向けた選挙戦に入った。「自分が選びたい候補者に投票できる選挙は、これが初めてだ」。最大都市ヤンゴンの中心部で小さな書店を営むキンマウンティンさん(61)は感慨深げに語った。
 以前は国営企業に勤めていた。過去の選挙では、政権側に投票するよう上司に命令されてきたという。「自分たちが選ぶ政府のもとで一歩ずつ発展していきたい」と期待を込めた。
 ヤンゴン市内では8日、ポスターや候補者の姿は目立たず、静かな運動開始となったが、国内各地では選挙カーが走り始めた。
 最大野党・国民民主連盟(NLD)党首のアウンサンスーチー氏は、フェイスブックの動画メッセージで有権者への訴えを始めた。「この数十年間で国民が真の変化を実現する初めての機会になる」
 民主化を目指してスーチー氏が立ち上がり、NLDの結党に参加したのは1988年。NLDが参加する総選挙としては、軍政がNLD圧勝の結果を踏みにじった90年以来、25年ぶりとなる。軍政が民政移管のために実施した前回10年の総選挙では、スーチー氏が自宅軟禁下にあったNLDは不参加だった。
 今回、小選挙区制で争われる上下両院計498議席に、NLDは最多の492人が立候補を届け出。483人が届け出た旧軍政系の与党・連邦団結発展党(USDP)と真っ向から争う。USDPの党首は11年の民政移管時に大統領に就いたテインセイン氏だ。
 軍政に屈せず民主化を訴え続けてきたスーチー氏の人気は高く、選挙が自由で公正になればNLDが優勢との観測が強い。
 選挙の公正性への懸念は完全には消えていない。選挙管理委員会に対しては、元陸軍中将で前与党下院議員のティンエー氏が委員長を務めるなど、政権寄りとの批判がある。一方、委員会は初めて欧州連合(EU)や米NGOなどの外国監視団の受け入れを決め、中立性をアピールする。日本政府も監視団を送る。
 国会は、憲法の規定で選挙によらない軍人枠が議席の4分の1を占めたままだ。スーチー氏は動画で、「変革すべき時に変われるよう協力してほしい」と国民に訴えた。「変化」か、国軍主導政治の「安定」か。選挙結果はこの国の将来を大きく左右する・・・

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