政治・国際
朝日新聞社

成立した安全保障法制 識者10人に聞く

初出:朝日新聞2015年9月20日〜9月24日
WEB新書発売:2015年10月8日
朝日新聞

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 衆参両院で可決・成立した安全保障関連法。日本の姿を大きく変える可能性がある、とも言われている。戦後の体制の重点を日本国憲法に置く見方からは異論も多く、その重点を日米安保に置く見方からは賛意も多いようだ。この法制をどう考えていけばいいのか。民主党・野田政権で防衛相を務めた森本敏氏、旧防衛庁出身で自民党・小泉政権で内閣官房副長官補を務めた柳沢協二氏ら計10人に論じてもらった。

◇柳沢協二氏×森本敏氏
◇阪田雅裕氏×宮家邦彦氏
◇丹羽宇一郎氏×大橋光夫氏
◇谷山博史氏×高山良二氏
◇パトリック・クローニン氏×楊伯江氏


柳沢協二氏×森本敏氏

 2015年9月19日に成立した安全保障関連法は、日本の安全保障や国のあり方をどう変えるのか。周辺国は同法が地域の安全保障に与える影響をどうとらえ、日本の「平和国家」としてのイメージは崩れないのか。同法への賛否それぞれの観点から識者に語ってもらう。今回は、今後の日本の安全保障のあり方や日米同盟などの視点から、小泉政権下で内閣官房副長官補を務め、自衛隊のイラク派遣に携わった柳沢協二氏と、民主党政権で民間人から初の防衛相を務めた森本敏氏に論じてもらった。

◎米軍の協力要請、断れない

元内閣官房副長官補・柳沢協二氏

 一発の弾を撃つこともなく、一人の犠牲者も出さずにやってきた自衛隊は、安全保障関連法により、殺し殺される憎悪の連鎖の中に確実に引き込まれていく。
 それはリスク以外の何物でもない。それを国民は感じていた。危険を冒してまで得る国益こそ議論されるべきだったのに、政府は自衛隊のリスクは増えないと議論の前提を否定してきた。安保法に対する国民の理解が深まらなかったのは当然である。
 安保法は、我が国の安全保障にとって有害である。
 そもそも中国や北朝鮮による我が国に対する攻撃の脅威は、個別的自衛権で対処すべき問題だ。集団的自衛権は抑止力を高めず、かえって緊張を高め、日本に対する攻撃のインセンティブ(動機付け)を上げる。
 自衛隊には駆けつけ警護や治安維持など「武器を使わなければいけない」任務が与えられ、ちゅうちょなく引き金を引くことが求められる。民間人へ誤射も増えるだろう。そこから、憎しみの連鎖が始まる。
 安保法の真の姿は、地球規模で米軍に切れ目なく協力するための法律だ。日本が米国の協力要請を断ることは不可能となった。米国の戦争に巻き込まれる可能性は高い。
 日本を「一国平和主義」と批判する人もいるが、憲法9条を持つ日本が、米国などと横並びで軍事的に国際貢献する必要などない。米国に追随さえすれば大丈夫という単純化と強迫観念が安保法の本質だ。
 自衛隊は「戦争をしない」「人を殺さない」からこそ、多くの国民から支持を得てきた。国民の理解のない安保法によって人を殺せばどうなるか。国民の負託もなく、自衛隊に命をかけさせる。こんな不条理はない。
 戦争とは何か。国家の意思で送り込まれた組織が海外で人を殺すことだ。その意味で、日本は「戦争ができる国」になったのだ・・・

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成立した安全保障法制 識者10人に聞く
216円(税込)
  • 著者村松真次、二階堂勇、武田肇、松井望美、宮崎健、小林豪、川端俊一、佐藤武嗣、倉重奈苗
  • 出版社朝日新聞社
  • 出版媒体朝日新聞

衆参両院で可決・成立した安全保障関連法。日本の姿を大きく変える可能性がある、とも言われている。戦後の体制の重点を日本国憲法に置く見方からは異論も多く、その重点を日米安保に置く見方からは賛意も多いようだ。この法制をどう考えていけばいいのか。民主党・野田政権で防衛相を務めた森本敏氏、旧防衛庁出身で自民党・小泉政権で内閣官房副長官補を務めた柳沢協二氏ら計10人に論じてもらった。[掲載]朝日新聞(2015年9月20日〜9月24日、10100字)

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