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朝日新聞社

ガバナンス粉飾 東芝不正会計問題の本質を考える

初出:2015年9月18日〜9月29日
WEB新書発売:2015年10月15日
朝日新聞

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 東芝の不正会計問題は、日本の名門企業による巨額の利益水増しという衝撃だけでなく、「上司に逆らえない」「当期利益至上主義」といった企業文化の負の側面も浮き彫りにした。一連の問題をどう考えるべきか。各分野の識者に、7回にわたってインタビューする。【登場する方々】冨山和彦(経営共創基盤CEO)、弘兼憲史(漫画家)、金子雅臣(職場のハラスメント研究所長)、郷原信郎(弁護士)、吉原和仁(UBPインベストメンツ社長)、細野祐二(会計評論家)、茂木健一郎(脳科学者)=敬称略

◇第1章 トップの意思、同調圧力に/経営共創基盤CEO 冨山和彦さん
◇第2章 島耕作は不正を断った/漫画家 弘兼憲史さん
◇第3章 「パワハラ」訴える環境を/職場のハラスメント研究所所長 金子雅臣さん
◇第4章 晴れぬ疑い、調査に限界/弁護士 郷原信郎さん
◇第5章 経営と監視、完全分離を/UBPインベストメンツ 吉原和仁社長さん
◇第6章 財務悪化、もっと深刻かも/会計評論家 細野祐二さん
◇第7章 組織依存症の欠点、認知を/脳科学者 茂木健一郎さん


第1章 トップの意思、同調圧力に

経営共創基盤CEO 冨山和彦さん


 カネボウにそっくり。名門企業の不祥事は、社会より共同体内のルールが優先されてきた。トップの意思が同調圧力として現場に働き、上から遠いところでも誰の指示かわからない細かい不正が幅広く起こる。
 東芝のトップは、不採算部門に売るぞ売るぞと脅しながら「何とかしろ」と言っていた。悲惨なのは現場。降伏できないから無理するしかない。現場に降伏させてくださいと言わせるのは経営ではない。構造的な負け戦なら、撤退を決断できるのが経営力だ。
 カネボウは赤字の繊維事業を長く引っ張り、潰れそうになって粉飾決算をやった。東芝には強い重電や半導体がある。もうからないものは、さっさとやめる新陳代謝が必要だ。
 東芝の問題は「ガバナンス粉飾」。ガバナンスは権力メカニズムが健全に作用するための担保。最たるものがトップ人事だ。形式的には社外取締役が社長を選ぶ委員会等設置会社だったが、報道で見る限り機能していた気配がない。社長の前任者やOBが権力を手放していなかった。
 右肩上がりの環境では、先輩が後輩を社長に選ぶ方が間違えない。だが、不連続に環境が変わる時代、ムラの論理だけで経営者を選ぶのは危険だ。
 私が社外取締役を務めるオムロンは、執行部と共同で子会社社長をさせるなどのテストをし、7年かけて社長候補を選ぶ。どの企業も、社外取締役が社長選びの責任をしっかり負うべきだ・・・

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