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教育・子育て
朝日新聞社

海外行ったら人生変わった 海外留学で明日をつかんだ若者たち

初出:2015年9月24日〜9月27日
WEB新書発売:2015年10月22日
朝日新聞

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 ニュージーランドの牧羊、インドネシアの児童養護施設、米国の大学、ガーナの保育園……。文部科学省によると、2013年度に海外留学した高校生は4万2049人。政府は20年までに6万人にする目標を掲げるが、高校生に聞くと、「留学したいと思わない」が過半数で、「内向き」志向が根強い。2015年度から始まった「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」は、海外留学を希望する高校生に渡航費などを支援する官民共働プログラム。感受性豊かな年代の若者たちは、未知の土地で何を学んだのか? 同プログラムを使って海外留学を果たした一期生300人の中から、4人の生徒たちの貴重な経験談を紹介する。

◇第1章 夢の輪郭、海外で浮かぶ
◇第2章 「質」の高い発言、もっとしたい
◇第3章 自分の演奏、変わった1カ月
◇第4章 知りたかった途上国で濃い体験


第1章 夢の輪郭、海外で浮かぶ

 だだっ広い牧草地、数え切れないほどの羊。徳島県立徳島北高校2年の生田陽菜(ひな)さん(16)=同県吉野川市=は、ニュージーランド・クライストチャーチ近郊の姉妹校に交換留学して間もない2015年7月、農業実習のため、学校近くの農場を訪れた。
 牧羊犬や自分の体と声を使って誘導、子羊を1頭ずつ抱きかかえ、寄生虫予防のワクチンを注射するのがミッションだ。子羊って、かわいい――。そんな浮ついた気持ちは、農場に着くなり漂ってきた動物臭や足元の大量の糞尿(ふんにょう)にかき消された。
 まず、子羊を捕まえるのに一苦労。抱き上げても暴れて蹴られ、また逃げられる。作業着を泥や糞で汚しながら、やっと1頭をかかえた。次は注射。ためらっていると、農場主の男性は「耳の近くに一気に打つんだ。終わったら優しく下ろしてやって」とアドバイスしてくれた。
 抱っこも注射も、繰り返すうちにだんだんと手早くなった。「終わった時は、やったぞー、と達成感いっぱいでした」


 15年6月、東京・文部科学省の講堂。官民協働の海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」で初めてとなる高校生コースの壮行会があった。「夢はグローバルドクターです」。決意を述べる生田さんの姿が壇上にあった。
 夢のきっかけは、アフガニスタンで長年、診療や住民の生活支援に取り組む医師中村哲さん(69)の活動をテレビで知ったこと。治療にとどまらず、自ら重機を操って水路を掘る姿に感銘を受けた。「自分も途上国の人を支える医師に」。14年は地元・徳島大医学部の体験授業に参加し、模型を使って採血や縫合の方法を学んだ。
 そんな中、巡ってきた留学のチャンス。語学力を高めつつ、海外の多様な生活や文化を体験することは夢に近づくステップ――。そう思い、15年7月初めから約3カ月間の挑戦を決めた。
 高校で英語のディベートやプレゼンテーションは重ねてきたが、本場の英語はスピードが違った。初めは授業内容も連絡事項も聞き取れない。クラスの友人の助けがいらなくなったのは、ひと月ほどたってからだ。
 「食」を自分の軸と考え、ニュージーランドでの3食すべてを写真に記録している。滞在先の家庭では牛肉を中心に肉が毎日、食卓に並ぶ。白身魚とジャガイモを揚げたフィッシュ・アンド・チップスには、ソースをたっぷり。その味の濃さにも慣れ、帰国したら日本の味が薄すぎると感じてしまいそうだ。
 考え方や生活の違いも、「こういうもの」と考えたら自然に受け入れられた。「大きく前進できたけれど、まだまだ私は夢の途中。帰国後は後れをとった高校の勉強に励みたい」

 インドネシア・ジャワ中部の都市スマラン。林に囲まれた郊外の児童養護施設が東京都立杉並総合高生ら9人の目的地だ。7月半ばから約2週間、施設の仕事を手伝いながら、そこで暮らす小中学生らと交流した・・・

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