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文化・芸能
朝日新聞社

北陸新幹線がやってきた 新旧相交じるおもてなしの郷の魅力

初出:2015年7月28日〜10月6日
WEB新書発売:2015年10月22日
朝日新聞

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 2015年3月の北陸新幹線の開業で、首都圏から北陸への距離はぐっと縮まった。そのことは、北陸の魅力にどんな変化を及ぼしつつあるのだろうか? 当地にゆかりのある人々に、近くなったことでますます輝きを増す北陸の魅力を語ってもらった。【登場する方々】檀ふみ(女優)、篠井英介(俳優)、東雅夫(文芸評論家)、タフィ・ローズ(富山GRNサンダーバーズ選手兼コーチ)、ぶらっくすわん(タレント)、甘池栄子(「レディー・カガ」メンバー)、松井紀子(松井機業6代目)、野路国夫(コマツ会長)、山崎一之・洋子(牧畜業)、四十物直之(四十物昆布社長)、清水省吾(NPO法人ふくい路面電車とまちづくりの会事務局長)、室谷文音(叙情書家)、市川ぼたん(日本舞踏家)=敬称略

◇第1章 北陸、浮足立たないでね/女優 檀ふみさん
◇第2章 「百万石」の誇り、くすぐれ/俳優・石川県観光大使 篠井英介さん
◇第3章 「魔術師」を育んだ、妖しい街/文芸評論家 東雅夫さん
◇第4章 日本野球の教え、富山で伝道/富山GRNサンダーバーズ・選手兼コーチ タフィ・ローズさん
◇第5章 名所背景に、踊り続けて/タレント ぶらっくすわんさん
◇第6章 温泉郷の女性がつながった/「レディー・カガ」メンバー 甘池英子さん
◇第7章 「しけ絹」の美、次世代へ/松井機業6代目 松井紀子さん
◇第8章 一極集中の社会、変えたい/コマツ会長 野路国夫さん
◇第9章 牛飼い通じて見る世界/牧畜業 山崎一之・洋子さん
◇第10章 「第2の北前船」に期待/四十物昆布社長 四十物直之さん
◇第11章 鉄道網を生かすまち、追究/NPO事務局長 清水省吾さん
◇第12章 創作イメージ尽きぬ海と/抒情書家 室谷文音さん
◇第13章 稽古場、自然と心和やかに/日本舞踊家 市川ぼたんさん


第1章 北陸、浮足立たないでね

女優 檀ふみさん


 私、実を言うと、あんまり、北陸新幹線万歳とは思ってないの。金沢まで開業してから4カ月半。2015年夏の北陸への観光客も多いでしょうけれど。
 金沢の街を尊敬しています。いい具合に緑というものや古いものを残し、新しいものを入れている。
 たとえば「金沢21世紀美術館」。街のど真ん中にありますよね。最初は物議を醸していたのが金沢の顔になった。市の中心部の水路にかぶせていたコンクリートブロックを大反対に遭いながらはがしたんですね。だから至る所で水の流れが聞こえ、古い町の名前も復活させた。昔と今をつなぎつつ、今を未来に託そうとしている感じ。
 金沢の人の特徴ですか? ちょっと手垢(てあか)がついちゃった言葉ですけど、おもてなしの心っていうのかな。それも控えめな。金沢のおすしは、ご飯がちょっと温かいんです。食べた人にぬくもりをっていう心遣いからでしょう。多くの人が茶道をたしなんでいるからお茶のおもてなし文化も、生活の中に根づいているんでしょうね。
 加賀友禅に「虫食い」という技法があります。虫に食われたような葉っぱを描いた絵柄ですが、美に美を重ねていく京友禅とは違って、自然をつぶさに観察し自然から学んできた加賀友禅の特徴がよく分かります。
 こうした伝統文化や、地方色豊かな昔ながらの雰囲気がいまでもちゃんと残っているのは、やっぱり東京との行き来が不便だったことが大きかったんじゃないかしら。この先、もっともっとお客が増えても浮足立たないでほしいなあ。いまのように、持っているものを大事にすることが将来につながっていくんだと思いますから。
 北陸では富山も大好きです。富山といえば立山ですね。万葉集に「立山(たちやま)に降りおける雪を常夏に見れども飽かず神(かむ)からならし」という大伴家持の歌があります。立山の雪は夏に見ても飽きない、神の山だからという意味です。
 「神の山」に私が登ることはないと思っていましたが、木村大作監督から2年前、立山が舞台の映画「春を背負って」のお話をいただきました。「立山に登るけども檀さんやってくれるかな?」。二つ返事で、その日からスクワットを少しずつ始めて。春と夏の2回、標高三千メートル近くまで登りました。
 忘れられないのは羽田から富山空港への飛行機から見た眺めです・・・

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