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政治・国際
朝日新聞社

息子2人は難民船に消えた ミャンマー少数民族、館林の不安な夜

初出:2015年9月22日〜9月24日
WEB新書発売:2015年10月29日
朝日新聞

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 ミャンマー西部に済む少数派イスラム教徒のロヒンギャ族は、ミャンマー政府から国籍を奪われ、移動や結婚の自由を制限されるなど、差別を受けている。群馬県館林市には、弾圧を避けて日本へ逃れてきたロヒンギャ族が約200人住むが、日本政府の厳しい難民認定の壁に阻まれ、多くが何年間も仮放免(不法滞在)になっている。すべてを奪われ、収容の恐怖に怯え、仕事もできない毎日――。彼らに安息が訪れるときは来るのか? 苦闘の日々に迫るルポ。

◇第1章 船で避難、息子2人消えた/父に「祈ってて」最後の電話
◇第2章 母国でも日本でも、人権ない/難民認定されず働けぬまま
◇第3章 洪水・人権侵害…苦難続く/日本政府「顔」見えぬ支援


第1章 船で避難、息子2人消えた/父に「祈ってて」最後の電話

 2015年9月初め、シリア難民とみられる男の子の遺体がトルコの砂浜に漂着したというニュースが全世界を駆け巡った。
 群馬県館林市に住む派遣社員のジャファル・フセインさん(53)はSNSでその知らせを見た。「息子たちと同じだ。とても悲しい」
 行方不明の2人の息子のことが頭をよぎり、心が沈んだ。
    ◇
 13年6月1日、当時21歳の次男アンワルさんから電話がかかってきた。
 「お父さん、これが最後の電話だよ。このあとは電話ができない。祈ってて」
 それ以降、現在もアンワルさんとの連絡は途絶えたままだ。
 アンワルさんは兄のサデックさん(当時27歳)と、インドネシアから、南に約500キロにある豪クリスマス島に行くつもりだった。
 電話から約10日後、ジャファルさんはインターネットである記事を見つけた。クリスマス島沖で少なくとも55人が乗った亡命者の船が沈没した、と書かれていた。豪軍が発見し、少なくとも13人が死亡、生存者は発見されていないという。


 ジャファルさん親子はミャンマー西部のラカイン州に住んでいたイスラム教徒の少数派ロヒンギャ族だ。バングラデシュからの移民とみなされ、1982年にミャンマーの法律で国民から除外された。国籍がなく、移動や結婚などの自由も制限され、差別の対象となってきた・・・

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