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朝日新聞社

布団なんて3年ぶりやな 子どもの貧困6人に1人

初出:2015年10月10日〜10月15日
WEB新書発売:2015年10月29日
朝日新聞

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 DV被害者のシェルターにきた7歳と4歳の姉妹。長袖シャツはあかで変色し、頭にはシラミがいた。お風呂に入るのは1カ月ぶり。「お姉ちゃん、これでいじめられなくなるね」。妹が何度もそう言った。高校3年の少年。一緒に暮らしていた父親が失踪、17歳の妹と保護されたとき、家財道具は炊飯器と洗濯機と毛布1枚、所持金は110円。ハムスターだけがえさを与えられ元気だった。厚生労働省によると、日本の子どもの貧困率は16・3%、過去最高を更新している。支援のあり方など解決の糸口を探るため、貧困の現場を取材した。

◇序章 姉妹 1カ月ぶり風呂
◇第1章 毎日同じ服って言われた
◇第2章 毛布1枚 父子で取り合い
◇第3章 友達ほしさ 万引き重ねた
◇第4章 歯医者行けず 根だけの乳歯
◇第5章 借金し短大進学 風俗頼った


序章 姉妹 1カ月ぶり風呂

 6畳ほどの面談室に、すえた臭いが広がった。
 2年前の2013年9月。関東地方にあるDV被害者のシェルターの職員は、39歳の母親と7歳の長女、4歳の次女を迎えた。
 差し出したオレンジジュースを、姉妹は一気に飲み干した。白とピンクの長袖シャツはあかで灰色に変わり、頭にはシラミがいた。
 一家の手荷物は、ランドセルとポリ袋二つ。サイズの合わないシャツ、穴の開いた靴下や下着が、汚れたまま詰め込まれていた。
 風呂は約1カ月ぶりだという。翌日から一緒に入り、姉妹の髪をとかし、数百匹のシラミをつぶした。
 「お姉ちゃん、もうこれでいじめられなくなるね」。次女がそう言うのを何度も聞いた。


 いま、3人は母子生活支援施設で暮らし、自立を模索する。
 保護されるまでの暮らしぶりを、母親は振り返って語る。
 夫はトラック運転手や倉庫管理など10年で10回以上転職した。年収は200万円前後。家賃や光熱費以外は酒やたばこに消え、自分の事務職の給料などでやりくりしていた。
 9年前に長女が生まれてから、「頭が悪い」「ダメな女」などと毎日なじられた。洗濯物がたためない。ご飯を作りながら、子どもに気を配れない。酒が入ると、胸ぐらをつかまれ殴られた。後に分かることだが、母親には二つのことが同時にできない「広汎(こうはん)性発達障害」などがあった。
 6年前に次女が生まれた後、「能力不足」との理由で解雇された。次の職が見つからず、家計は悪化。夫の失業で約2年間は生活保護も受けたが、夫が再就職すると打ち切られた。夫は給料を家計に入れず、月約4万円で生活した。長女が小1になったころから電気、ガス、水道のどれかが止まるようになった・・・

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