政治・国際
朝日新聞社

新聞と憲法9条〔3〕 砂川事件とはなんだったのか(1)

2015年10月29日
(22700文字)
朝日新聞

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 安全保障関連法の審議の過程で、にわかに注目を集めたのが、1959年12月、最高裁が下した砂川事件判決。2014年春、自民党副総裁の高村正彦氏が、集団的自衛権の行使が憲法9条に反しないという主張の根拠として持ちだしたのが発端だ。しかし、砂川事件がいかなる事件だったのか、私たちはどれだけ知っているだろうか? 戦後史の曲がり角でもあった砂川事件の本質を探るレポート。

◇第1章 米軍基地拡張計画
◇第2章 全学連現地へ
◇第3章 無罪判決
◇第4章 朝日の判決批判
◇第5章 安保条約と砂川


第1章 米軍基地拡張計画

 56年前の判決が、国会で、ジャーナリズムで、論議の的となっている。
 1959年12月16日に最高裁が言い渡した砂川事件判決のことだ。
 「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」
 2014年春、自民党副総裁の高村正彦(73)がこの一節を引いて、集団的自衛権の行使は憲法9条に反しない、と党内で説明を始めた。「必要な自衛のための措置」として最高裁は集団的自衛権の行使を排除していない、との趣旨だ。
 ところが、15年6月、安全保障関連法案の審議が進むなか、3人の憲法学者が衆院憲法審査会で「安保法制は違憲」「砂川判決は合憲の根拠とならない」と述べて一気に注目が集まった。
 砂川事件は57年7月、米軍立川基地の拡張に反対する学生、労働組合員ら約300人が基地内に立ち入り、うち7人が起訴された事件だ。東京地裁は59年3月、米軍駐留を違憲と判断し、無罪を言い渡した。
 しかし、最高裁は、駐留米軍は憲法が保持を禁ずる戦力にあたらないとして一審判決を破棄し、地裁に差し戻した。最高裁長官の田中耕太郎が補足意見でこう述べた。
 「今日はもはや厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなわち『他衛』、他衛はすなわち自衛という関係があるのみである」


 判決翌日の読売新聞が社説で批判する。
 「自衛のためのみならず他衛のための戦力保持をも許されるような口ぶりであるが、たいへんな脱線である」
 憲法学者の橋本公亘(きみのぶ)もこう語った。
 「憲法は他国の防衛義務というようなことを全く考えていない。……そういうことに介入しないことが憲法の精神であることは、一点の疑う余地もないだろうと思うのです」(法律時報60年2月号臨時増刊)
 判決2カ月後の60年2月26日、首相の岸信介が衆院安保特別委員会で発言する。
 「自衛隊は、各国におけるところの軍隊と同様な権利や行動範囲を持つものでない。いかなる場合においても、この領土外に出て実力を行使するということはあり得ないという建前を厳守すべきことは、日本の憲法の特質でございます」
 砂川事件の軌跡をたどる・・・

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新聞と憲法9条〔3〕 砂川事件とはなんだったのか(1)
216円(税込)

安全保障関連法の審議の過程で、にわかに注目を集めたのが、1959年12月、最高裁が下した砂川事件判決。2014年春、自民党副総裁の高村正彦氏が、集団的自衛権の行使が憲法9条に反しないという主張の根拠として持ちだしたのが発端だ。しかし、砂川事件がいかなる事件だったのか、私たちはどれだけ知っているだろうか? 戦後史の曲がり角でもあった砂川事件の本質を探るレポート。[掲載]朝日新聞(2015年7月3日〜8月7日、22700字)

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