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政治・国際
朝日新聞社

関税だけがTPPじゃない 大切なのはルールの統一

初出:2015年10月9日〜10月24日
WEB新書発売:2015年11月5日
朝日新聞

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 環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋で合意した。関税の撤廃や引き下げで輸入品がどれだけ安くなるか、に関心が集まりがちだが、重要なのはそれだけではない。外国への投資や知的所有権をめぐる仕組みなどをそろえ、ビジネスの分野で「共通のルール」を作ることが最大の眼目だった。今回の合意の中身や、なお残る問題点などをまとめた。

◇第1章 共通ルール、輸出を後押し
◇第2章 お肉、どのくらい安くなる?
◇第3章 ミカンやリンゴ…果物への影響は?
◇第4章 食の安全は守られるの?
◇第5章 アイス、ガム、チョコ、お菓子どうなる
◇第6章 著作権の保護期間、どうかわるの?
◇第7章 自動車輸出、恩恵はあるの?
◇第8章 コメの輸入は増えるの?
◇第9章 海外ビジネス、やりやすくなる?


第1章 共通ルール、輸出を後押し

 「TPPは、21世紀の世界のルールになっていく」
 米アトランタで2015年10月5日、大筋合意を祝う拍手で始まった共同記者会見で、甘利明TPP相はそう強調した。
 TPPは、参加国が輸入品にかける関税を取り払ったり、国ごとにまちまちだった貿易や投資のルールをそろえたりすることで、ヒト・モノ・カネ、そして情報が国境を越えて動く「経済圏」をつくる試みだ。2008年にシンガポールやニュージーランド(NZ)など4カ国で始まり、米国や豪州などが加わる交渉が10年からスタート。日本は遅れて13年から参加した。
 最大の特徴は、関税をなくすことに加え、企業が外国に投資をしやすくしたり、著作権などの知的財産を守る制度をそろえたりと、ビジネスの幅広い分野で「共通のルール」をまとめたことだ。国内総生産で世界の4割近くを占める規模や内容の幅広さから、「1993年のウルグアイ・ラウンド以来、最も重要な協定」(ロブ豪貿易・投資相)とも評される。
 たとえば、ベトナムやマレーシアの外資規制が緩やかになって日本のコンビニが進出しやすくなる。企業の投資を守るため、地元政府が技術移転を求めることを禁じ、損害を受けたときには地元政府を訴えられる仕組みも取り入れた。
 日本が得意な自動車や家電など工業製品の輸出にも追い風だ。日本のTPP参加国向けの輸出は約19兆円。TPPが発効すれば、その99・9%の関税が30年以内にゼロになる。自動車では、米国が関税2・5%を25年でなくし、ベトナムも最高70%もの一部の車の関税を10年で取り払う。自動車メーカーは、域内で手に入れた部品を一定程度使えば、域内で車を無税で輸出できるようになる。
 食卓への影響も大きい。関税が下がったり、ゼロになったりすることで、輸入する牛肉や鶏肉、水産物、果物、ワインなどがより安く手に入るようになる。
 このほか、電子商取引のルールをそろえたり、ビジネスマンの入国手続きを簡単にしたりするほか、中小企業の支援策も盛り込んだ。経済効果は日本の国内総生産(GDP)の2%に相当するとの試算もある。
 日米が中心となって地域の新しいルールができることで、経済、軍事両面で台頭する中国を牽制(けんせい)するという安全保障面でのねらいもある。韓国もTPPに加わる検討を始めた。

◎競争力ある農業育成、課題
 一方、これまで高い関税に守られてきた日本の農業は、安い輸入品との競争にさらされることになる・・・

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