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教育・子育て
朝日新聞社

ひいおばあちゃんに聞いた戦争体験 教科書では伝えられないこと

初出:2015年10月1日〜10月4日
WEB新書発売:2015年11月5日
朝日新聞

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 千葉県市川市の私立昭和学院中学校では、夏休みの宿題で祖父母に戦争体験を聞き取っている。「戦時中っていっても、うちのおばあちゃん、66歳。まだ生まれてないんだもん」。戦後生まれも増え、年々難しくなっている。曽祖父母や、母親が働く介護施設に通う女性に話を聞いた子も。「ひいおじいちゃんは、近くの死体に隠れて助かったんだよ」「バケツリレーでは最後の人に回すまでに水がなくなっていた」「8時15分、突然に窓の外が白ともオレンジともつかない光が飛び込んできました」。教科書では伝えられない生々しい話に、子どもたちは何を感じたのか。

◇第1章 戦死していたら私は…
◇第2章 兵隊になるための教育、嫌だ
◇第3章 竹で敵を刺す訓練、本当なんだ
◇第4章 教科書になかった体験、伝えたい


第1章 戦死していたら私は…

 A4判1枚のリポート用紙に、手書きでびっしりと書き込まれていたのは、戦争について語る祖父母の言葉だった。
 千葉県市川市の私立昭和学院中学校の2年生が2015年夏、身近なお年寄りにインタビューして、戦争体験をまとめるという宿題に取り組んだ。写真や図も添え、約10枚に及ぶ生徒もいた。
 「今から、みんなのリポートを読み回します」。9月初め、生徒同士でリポートを評価し合った。
 1組では、生徒が3、4人ずつの班に分かれ、友人のリポートへの評価をプリントに書き込んだ。作業が早く終わった古山愛梨さん(13)の班では、話がはずんでいた。


    ◇
 「戦時中っていっても、うちのおばあちゃん、66歳。まだ生まれてないんだもん」
 そんな女子生徒の話を聞いた古山さんは「うちのひいおじいちゃんは、戦争に行ったんだよ。アメリカ兵に撃たれて指がなくなったって。もしそこで、ひいおじいちゃんが死んでたら、私いなかった」。
 古山さんがインタビューしたのは、千葉県内に住む祖母(76)だ。祖母の父(ひいおじいちゃん)は指と片方の目を失い、祖母の母(ひいおばあちゃん)は栄養不足で病気になり、寝たきりの生活だったという。
 祖母は、東京大空襲を経験した。まだ幼かった当時、兄に背負われて、防空壕(ごう)へ。中は暑く、外で響く爆音に恐怖を感じたことも語ってくれた。
 古山さんは初めて、東京大空襲の様子を知った。「小学生のころ聞いた記憶はあるけど、歴史を勉強してなかったから、よく分かっていなかった。戦争で知っていたのは、原爆だけ」
 戦争に興味がなかったわけではない。小学6年生のころ、「アンネの日記」に夢中になったことがある。ただし、本から得られたのは、「ドイツ」「ユダヤ」「ヒトラー」という断片的な知識だけだったという。
 祖母へのインタビューを終えた古山さんが自宅でリポートを書いているとき、母が話しかけてきた。
 「ひいおじいちゃんは、近くの死体に隠れて助かったんだって。隠れてくれなかったら、愛梨はいなかったんだよ。運がいい家族なんだね」
 でも、「ひいおじいちゃんからは『戦争から帰ってくることは罪だった』とも聞かされた」という。
 古山さんは、ひいおじいちゃんが帰ってきてくれて良かったと思っている・・・

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