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医療・健康
朝日新聞社

認知症の人をどう支えるか 5人に1人がなる社会の処方箋

初出:2015年6月7日〜10月18日
WEB新書発売:2015年11月19日
朝日新聞

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 65歳の7人に1人、約462万人が認知症とされる。10年後の2025年には、5人1人が認知症になると言われている。本人がつらいのはもちろんだが、本人の暮らしを支える家族や地域の人々は、どんな気持ちで、どんな手段で戦っているのだろうか。さまざまな事例を元に、認知症が身近な存在になる「認知症社会」の生き方をさぐる。
◇第1章 母はできる、気づいた
◇第2章 徘徊、それでも共に
◇第3章 [反響編]家族の葛藤と絆、私も共感
◇第4章 母介護、息子の恩返し
◇第5章 入所、どこに行けば
◇第6章 老老介護つらいけど
◇第7章 [反響編]つらい、思いすぎずに
◇第8章 一人暮らし、孤立しない
◇第9章 夫婦発症、自宅で2人
◇第10章 地域の目、安心の絆
◇第11章 [反響編]暴言、やりきれない


第1章 母はできる、気づいた

「何でも否定」やめ、したいこと協力
 当時の日記には長女への文句が書き連ねてあった。「こわいやつや」「それが親への態度か」……。
 京都市の中西栄子さん(67)は2010年12月、63歳でアルツハイマー型の認知症と診断された。その8年前に夫は亡くなり、一人暮らし。小学校の教員を定年退職し、1学期だけ非常勤で働いていた。
 診断前、孫らと行った焼き肉店で、「それ何回も聞いた。最近もの忘れがひどいな」と長女に言われた。テーブルをドンとたたき、「何回も同じこと言ったらあかんのか」と怒鳴って一人で出て行った。
 長女の河合雅美さん(43)は薬剤師。近くで家族と暮らし、母の家を行き来していた。焼き肉店での母は、それまでの家族思いの姿とはかけ離れていた。ただ、頼んだ買い物ができないなど、数カ月前からおかしいとは思っていた。

◎「やめて」頼んだ
 認知症を疑い、「もの忘れ外来」で診てもらうことにした。車に乗せてから行き先を告げると、母は「なんで私が行かなあかんの」と嫌がった。「診てもらって大丈夫なら、それでいいじゃない」となだめても、怒って黙っていた。
 診断後、認知症の進行を抑える薬を飲み始めた。お金は、話し合って長女が管理した。すると母は「通帳見たらお金が減ってる」と自宅に文句を言いに来るようになった。説明すれば「泥棒扱いして悪かった」と謝るが、2時間後には「金返せ」とやって来た。
 火事や事故を心配し、長女は「火を使うのはやめて」「車の運転もやめて」と母に頼んだ。学校での仕事は医師と相談してしばらく続けたが、肩の骨折を機にやめてもらった。
 中西さんは散歩しかすることがなくなった。1日に2万歩に達することもあった。2人で会えばけんかになり、会話も減った。

◎交流会が転機に
 転機となったのは、12年10月にあった「認知症の人と家族の会」京都府支部の交流会。インターネットで調べた長女に誘われた・・・

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