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朝日新聞社

航空産業ラストチャンス MRJは日本のものづくりを救えるか

初出:2015年11月12日〜11月14日
WEB新書発売:2015年11月26日
朝日新聞

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 2015年11月11日、国産初のジェット旅客機MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)が初めて空を飛んだ。国産旅客機の開発は、プロペラ機のYS11以来、半世紀ぶり。欧米の下請けに甘んじてきた日本の航空産業が、世界市場に再び挑む一里塚となるMRJは、日本のものづくりにどんな夢を運ぶのか。激しい国際競争の実情にも触れながら、深層に迫るレポート。

◇国産の翼、世界へ再挑戦 MRJが初飛行
◇MRJ初飛行てこに営業強化 「アジアに拠点新設」
◇MRJ、期待と歴史乗せ
◇開発遅れ、揺らぐ優位性


国産の翼、世界へ再挑戦 MRJが初飛行

◎脱下請け、小型機勝負
 2015年11月11日午前9時35分。流線形のMRJが愛知県営名古屋空港を飛び立った。秋空に吸い込まれていくと、一帯は大歓声。近くの公園はカメラを向ける人らで混雑し、周辺の路上は車であふれた。東京都大田区から訪れた会社員の男性(30)は「スマートで美しい。世界の航空機産業界に割って入って欲しい」。


 午前11時すぎの着陸も滑らか。操縦した安村佳之機長は「これまで経験した中でもトップクラスの操縦性と安定性」と振り返る。
 MRJは部品の7割を外国製に頼るものの、日本企業の三菱航空機が設計し、親会社の三菱重工業が国内で組み立てる。こうした国産機開発は半世紀ぶりだ。
 大型機をてがける米ボーイングや欧州エアバスの背中は遠く、MRJは「リージョナルジェット」と呼ばれる100席以下の小型機市場をめざす。
 三菱重工はボーイングなどの下請けとして、求められた部品をつくる技能を磨いてきたが、機体を一から組み立てるノウハウに乏しい。設計変更や部品調達の遅れが相次ぎ、初飛行は当初の予定から4年以上も遅れた。
 それだけに初飛行の喜びはひとしお。三菱重工の大宮英明会長は「初日としては大成功。幼稚園に初めて通園する我が子を見送るような感じだった」と話す。

◎燃費の良さ・快適さ売り
 初飛行は無事に終えたものの、まだ飛行試験を始めたに過ぎない。今後は主に米国で約2500時間もの飛行試験を繰り返す。17年春に予定する最初の納入に向け、寒冷地や悪天候に対応できるかなど課題を洗い出しては手直ししていく。
 世界の航空会社に売り込むためには、「型式証明」と呼ばれる安全のお墨付きを日米欧の当局から得ることが必要だ。
 受注を伸ばすことも欠かせない。三菱航空機の森本浩通社長は「初飛行を励みに受注活動に力を注ぐ」と話した。初飛行の遅れが影を落とし、ここ1年以上、新たな受注はなかった。
 現在は、全日本空輸を含む日米などの6社から合計で約400機。6倍の2500機をめざす。小型機市場は今後20年で約5千機の需要があると見込み、その半分にあたる。北米や欧州を中心に売り込みを急ぐ・・・

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