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経済・雇用
朝日新聞社

ソフトバンク2・0 通信会社から投資会社への変身の成否

初出:2015年11月11日〜11月14日
WEB新書発売:2015年11月26日
朝日新聞

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 ソフトバンクグループ社長・孫正義の執務室は、本社が入る東京・汐留の高層ビルの26階にある。2015年6月、孫が「後継者の筆頭候補」に挙げるニケシュ・アローラが副社長に就いた。それは、従来の通信会社から世界中の有望企業に投資する会社への変容(「ソフトバンク2・0」)を意味した。それとともに26階の配置も変わった。「すべて孫さんの意向です」。ソフトバンク内の権力構造の変化を象徴する出来事だった――。急激な構造転換は、ソフトバンクをどこへ連れていこうとしているのか? その実態と成算を問う同時進行ドキュメント。

◇第1章 国際化へ、変わる「26階」
◇第2章 勧誘は紙ナプキンの裏で
◇第3章 投資戦略担う幹部チーム到来
◇第4章 「芸術的」な資金調達


第1章 国際化へ、変わる「26階」

◎参謀は外国人「迎賓館」で極秘交渉
 ソフトバンクグループ社長・孫正義の執務室は、本社が入る東京・汐留の高層ビルの26階にある。役員会議室や応接室、参謀の部屋もあるそこは、大がかりなM&A(企業合併・買収)など最高意思が決まるフロアだ。
 この「表」とは別に「奥」がある。孫の資産管理会社が運営する“迎賓館”だ。夜の会食に向かう時間を惜しみ、かつ密談が人目につかないように設けたプライベートな接待所である。
 秘書さえ連れて行かない私的空間。入室が許された人らによると、小川が流れる造作がなされ、日本画家千住(せんじゅ)博が春夏秋冬を描いた屏風(びょうぶ)が飾られている。高級すし店から引き抜いた職人や腕利きシェフを雇い、ロマネ・コンティなど高級ワインもそろう。米ゼネラル・エレクトリックの最高経営責任者(CEO)ジェフリー・イメルトや、グーグル元CEOのエリック・シュミット、坂本龍一ら孫の賓客が招かれてきた。
 2014年12月のある晩、ここで密談がもたれた。招かれたのは国際協力銀行の前田匡史専務ら金融関係者だった。前田は米政界の有力者、産油国の王族ら世界中に人脈を有する異色の銀行マン。民主党政権時代には「ロビイングもインテリジェンスもできる」(元官房長官の仙谷由人)と、内閣官房参与に起用されている。
 赤ワインを味わいながら、孫は「インドで太陽光発電をやろうと思っているんだ。日射量は日本の2倍ある」と切り出した。「もうだいぶ研究したよ」と孫が促し、説明を始めたのがニケシュ・アローラとラジーブ・ミスラという2人のインド出身者だった。アローラは米グーグルの元最高ビジネス責任者、ミスラはドイツ銀行債券部門の元責任者。「インドは官僚国家。簡単ではない」と危ぶんだ前田だが、この日から自然エネルギープロジェクトは水面下で一気に加速した・・・

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