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科学・環境
朝日新聞社

大久保多文化タウンを歩く 韓国系だけじゃない 多国籍の力

初出:2015年12月3日〜12月17日
WEB新書発売:2016年1月7日
朝日新聞

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 韓流ブームの訪れで、「コリアンタウン」として賑わった東京都新宿区・大久保。その後、中国、ベトナム、ネパール、タイ人なども引き寄せ、さまざまな文化が集積する、多文化の街として成長している。大久保の街は、なぜ在日外国人を引き寄せ続けるのか。日本の今の姿をうつしだす街の魅力を追った。

◇第1章 変化続ける「韓流の聖地」
◇第2章 駅・街頭の放送、20超す言語で
◇第3章 つながる同胞、食で新聞で寺で


第1章 変化続ける「韓流の聖地」

◎日韓W杯・「冬ソナ」…近年は空気一変
 店頭のテレビ画面に映る韓流スターが歌や踊りを繰り広げる。韓流グッズ、韓国家庭料理、韓国コスメ、焼き肉……。
 JR新大久保駅を出て東へ。韓国系の店が軒を連ねる大久保通り。「韓流の聖地」と呼ばれた一時ほどの勢いはないが、いまも曜日にかかわらず女性客やカップルらでにぎわいを見せている。



 「こんな光景になるなんて思ってもみなかった」。大久保通りで約90年続く書店「盛好堂」の社長、道岡勝人さん(72)は言う。



 十数年前まで、この街に点在していた韓国系の店には、主に歌舞伎町で働く韓国人らがやって来た。その後、職安通り沿いや路地に韓国系の店が増え始め、酒屋や米屋、文房具店などが並んでいた大久保通りの装いも5年ほど前から急激に変わった。



 大きなきっかけとなったのが、2002年のサッカー・ワールドカップ(W杯)日韓大会と、03年にNHK・BSで放送された「冬のソナタ」に始まる韓流ブームだ。
 日韓が共催したW杯で、大久保の飲食店では日本人と韓国人サポーターが肩を組んで互いのチームや選手を応援。街の知名度は一気に上がった。東方神起、KARA、少女時代など韓流スターが次々と人気を呼ぶと、韓国系の店は客層を日本人にも拡大。その数はピークの12年ごろには約500店に上った。
 「全国からファンや観光客が押し寄せた。歩道もごった返し、駅までの数百メートルが歩けないほどだった」。大久保通りで化粧品店「こまどり」を営む森田忠幸さん(64)は振り返る。1951年の創業だが、観光客から「日本人の店もあるのですね」と驚かれた。
 かつて大久保では、路地で外国人女性が道行く男性に性を売り、ヤクザの発砲事件も起きた。「日本人も含め、この街に集うさまざまな国の人が親しめる『天使のすむまち』にしよう」。森田さんら商店主は振興策を話し合い始めた。



 そこにやって来たのが韓流ブームだ。
 韓国系の出店ラッシュにテナントビルの賃料相場は3倍ほどに跳ね上がり、後継者不足や経営不振に苦しむ地元商店主の中には商売をやめて貸店舗業に転身する人も。「コリアンタウン」と呼ばれ始めた街は、商店主らが思い描いたのとは異なる姿だった・・・

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