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科学・環境
朝日新聞社

未来はすでにここにある デジタルクローンと自動注文冷蔵庫の未来

初出:2016年1月1日〜1月6日
WEB新書発売:2016年1月21日
朝日新聞

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 技術の急速な発展で、私たちの生活は、ものすごいスピードで未来的なものになりはじめています。人間のクローンをデジタルで作成する「デジタルクローン」、人工知能が理想の相手をマッチングする「人工知能コン」、スカイダイビングのように垂直でなく水平に空を飛べる「ウイングスーツ」、ひとりぼっちを楽しめる「だんぼっち」、「牛乳があと1本しかありません」など、としゃべり、将来は自動注文も視野に入れた冷蔵庫など――。技術と人間の欲望は、この社会をどこへ導こうとしているのか? 最先端の事例を眺めてみました。

◇第1章 あの人に会いたい
◇第2章 理想の恋人欲しい
◇第3章 空を飛びたい
◇第4章 ひとりになりたい
◇第5章 モノが欲しい


第1章 あの人に会いたい

◎人格や姿、生かし続けたい
 東京湾岸のオフィス。個人の人工知能(パーソナルAI=PAI)を開発するオルツの最高経営責任者(CEO)、米倉千貴(かずたか)さん(38)が話しかけた。相手はPAIで作った自分のデジタルクローン。
 米倉さん「今日の夜、何時からあいてる?」
 デジタルクローン「20時00分からあいてるよ」
 米倉さん「食事に行きたい」
 デジタルクローン「OK、何食べる? 和食はどう?」
 米倉さん「いいよ」
 パソコンの画面上には自らの顔。自らの声に似せた合成の音声が応える。



口調や癖を学習
 「アインシュタインに相対性理論を習いたい」。そんな発想からPAIの開発を始め、2016年中の実用化を目指す。PAIはフェイスブックなどSNSの情報やメール、位置情報を取り込んでその人の行動、趣味、人との関係性、口調、癖などを自然に学習していく。結果、デジタルクローンが「その人っぽく」活動するようになる。
 デジタルクローンは過去の自分も再現できる。たとえば息子が、高校時代の父親のデジタルクローンと話すことも将来は可能だ。
 本人の死後もデジタルクローンは動き続ける。「自分を残したい、という欲望をかなえる手段の一つと思う。プログラムの中で人は永遠に生きられる」。米倉さんは言う。
 海外でも取り組みが進む。米マサチューセッツ工科大学のプロジェクトから始まったベンチャー企業「Eternime」。オルツ社と同様、SNSでの記録などから人格を再現する。「昨日のパーティーはどうだった?」。そんな会話を1日数分、AIと交わし、40〜50年かけてデジタルクローンが完成する。
 インターネットで参加を募ると、3万人以上が登録。日本からも約1千人が応募した。50人が選ばれ、16年1月から作成が始まる。
 代表者のマリウス・ウルサケさんの思いがきっかけだ。14年に亡くなった祖母との思い出が、一緒に撮った1枚の写真しかなかった。「誰にでも残したい多くの物語や思い出がある」
 米テラセム運動財団は、すでにデジタルクローンの作成を始めている。故人を復活させようと、写真やメールなどのデータをAIに学習させている人も。目指すのは、亡くなった人と言葉を交わすことだ・・・

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