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朝日新聞社

こんなはずじゃなかった復興 巨大防潮堤で揺れる被災地

初出:2016年1月31日〜2月2日
WEB新書発売:2016年2月18日
朝日新聞

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 宮城県石巻市雄勝(おがつ)町では、津波で壊滅した町中心部にいま、130億円をかけ高さ9・7メートル、延長3・5キロの防潮堤を築く計画が進む。津波をかぶったまちの跡は、災害危険区域に指定され、もう人は住まない――。莫大な資金を投じた復興計画がかえって地域住民の軋轢を生み、人口減を誘発するといった事例が増えている。東日本大震災からまもなく5年。人口が激減する三つのまちから「復興」を考える。

◇第1章 [宮城・雄勝]巨大防潮堤、何守る/限界集落化「復興の現実」
◇第2章 [福島・楢葉町]避難解除、戻った住民5.7%
◇第3章 [岩手・大槌町]水産復興、担い手どこに


第1章 [宮城・雄勝]巨大防潮堤、何守る/限界集落化「復興の現実」

高台移転、住民戻らず
 いったい何を守るためなのか。硯(すずり)の生産やホタテ養殖で知られた宮城県石巻市雄勝(おがつ)町。津波で壊滅した町中心部にいま、130億円をかけ高さ9・7メートル、延長3・5キロの防潮堤を築く計画が進む。津波をかぶったまちの跡は、災害危険区域に指定され、もう人は住まない。高台の集団移転地が完成し、町外で仮住まいを続ける人が戻っても、中心部に住むのは震災前の620世帯から約80世帯にまで減る。



 更地にぽつんと立つ仮設商店街の一室で2015年12月25日、防潮堤計画をめぐり、宮城県と「持続可能な雄勝をつくる住民の会」の話し合いが持たれた。「景観を破壊する」と建設に反対する住民。道路や再建された水産加工場など、保全すべき施設があると主張する県。平行線が続いた。
 「海と陸が切り離された雄勝では、観光客も呼べない。10年以内に町は衰退する」。硯職人の3代目、高橋頼雄さん(48)は語気を強める。自宅を流されながら、この5年近く、町のホタテ祭りなどを引っ張ってきた。「何とかこの地で皆でやっていけないかと、考えてきたんです」
 県の担当者は「まちづくりの様々な会合で説明し、住民合意はなされたと判断した」という。だが決議などをとったわけではない。住民の会事務局の徳水博志さん(62)は「いま一度、地域住民を集めて採決すべきだ」と反論した。
 地元の市役所も、壁のような防潮堤を望んだわけではなかった。石巻市雄勝総合支所は震災の年、住民団体の議論もふまえ、海沿いを走る県道や国道を20メートルの高さまで移し、道沿いに山をきりひらいて住宅地をつくる復興案をまとめた。それなら防潮堤は、もとの4メートル程度に復旧すればいい。
 ところが県は、数十年から百数十年に一度の津波に対応する「L(レベル)1」の高さにこだわった。「道路移転は必要ない。費用もかかる」との考えが示され、9・7メートルの計画が動きだしたという。「防潮堤の上げ下げを議論していても、まちづくりは進まない。のまざるを得なかった」と三浦裕総合支所長は振り返る。
 県は18年春の防潮堤完成を目標に、年度内の着工をめざす。工事が始まれば、硯職人の高橋さんは雄勝を離れるつもりだ・・・

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