世相・風俗
朝日新聞社

仕事三つかけもち「複業」 これが私の働き方

初出:朝日新聞2016年1月8日〜1月22日
WEB新書発売:2016年2月25日
朝日新聞

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 この日は農家の中村さんだが、月曜になると東京のシステム開発会社に出勤、営業担当の社員として働く。そして火〜金曜はソフト会社「サイボウズ」の企画担当社員。そんな複数の仕事を掛け持ちする「パラレル(並列的)ワーカー」だ。常に三つの名刺を持って全国各地を飛び回る。やりたいことをやり、楽しく仕事をしたい。「数年後にはまた違う肩書になっているかも」。働き方が多様になっているいま。既存の殻を破り、新しいワークスタイルを選んだ人の姿を描きます。

◇第1章 パラレルワーカー/やりたいこと 「複業」で追求
◇第2章 営業トップ 育児との両立/5時退社でも成果出す
◇第3章 リモートワーク/自宅が職場 自由と子のため


第1章 パラレルワーカー/やりたいこと 「複業」で追求

◎IT社員・農家・研究者… 五つの希望実現
 休日の午後。千葉県印西市の中村龍太さん(51)は作業服姿で畑に立ち、農作業に追われていた。育てたニンジンの写真をスマートフォンのカメラで撮り、卸し先に送って収穫時期を相談する。「まだ駆け出しなので、試行錯誤中です」
 この日は農家の中村さんだが、月曜になると作業服をスーツに着替え、東京・日本橋のオフィスビルに通勤。システム開発会社「ダンクソフト」で営業担当の社員として働く。火〜金曜はソフト会社「サイボウズ」の企画担当の社員になり、土日は農家に。そんな、複数の仕事を掛け持ちする「パラレルワーカー」だ。
 愛用のタブレット型端末でサイボウズの社員専用アプリを開き、プレゼンテーションの資料を作っている時はサイボウズの社員。ダンクソフトのアプリを開き、商談メールを打っている時はダンクソフトの社員だ。コメやニンジンの収穫期は平日でも4、5日休みを取り、収穫に専念する。


 サイボウズの社員としては最近、山口県萩市の高校で、地元の人が遠隔授業で「先生」になれる実験を企画した。実はダンクソフトに依頼があった仕事だが、中村さんが両社の承諾を得た上で技術的に「適任」のサイボウズで引き取り、サイボウズがシステムを開発した。
 ダンクソフトでは、ワイン愛好家向けアプリの開発に携わった。このアプリは、逆にサイボウズの技術を使って開発。農業絡みでは、ニンジンの成長に必要な積算温度や日照時間を自動で測り、最適な収穫時期を探るアプリも、サイボウズの技術で作った。
 ネットワーク上の基礎となるシステムを開発するサイボウズと、そのシステムを使ったアプリを作るダンクソフト。それに農家。「それぞれ、お客さんはかぶらない。むしろお互いにメリットがあるので、会社は複業を認めてくれていると思います」と話す。
 常に三つの名刺を持って全国各地を飛び回り、会議や商談をこなす毎日だ。曜日にこだわらず、商談では相手の要望に応じて、ふさわしい会社との取引を提案する。心がけているのは、商談相手には必ず複数の名刺を見せること。「名刺の使い分けは信頼を損ないかねない。公明正大が大事です」
 転機は、前職の外資系大手IT会社に勤めていた時に訪れた。仕事は実績・給与とも順調に上がり、何の不満もなかった。「このまま会社に居続けるのかな」と何となく思っていた48歳の時・・・

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仕事三つかけもち「複業」 これが私の働き方
216円(税込)

この日は農家の中村さんだが、月曜になると東京のシステム開発会社に出勤、営業担当の社員として働く。そして火〜金曜はソフト会社「サイボウズ」の企画担当社員。そんな複数の仕事を掛け持ちする「パラレル(並列的)ワーカー」だ。常に三つの名刺を持って全国各地を飛び回る。やりたいことをやり、楽しく仕事をしたい。「数年後にはまた違う肩書になっているかも」。働き方が多様になっているいま。既存の殻を破り、新しいワークスタイルを選んだ人の姿を描きます。[掲載]朝日新聞(2016年1月8日〜1月22日、5400字)

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