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経済・雇用
朝日新聞社

CEO解任 夢を追う医薬品ベンチャー創業者を襲った資本の論理

初出:2016年2月17日〜2月20日
WEB新書発売:2016年3月3日
朝日新聞

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 世界中で1億三千万人が苦しむとされる「加齢黄斑変性」。初の治療薬を目指した薬が、いま開発の最終段階にある。開発元は、日本人医師が立ち上げたバイオベンチャー。ところが上場で豊富になった手元資金を狙って、雇ったばかりの役員がクーデターを起こし、突然CEOを解任されてしまった――。膨大なコストがかかる医薬品開発の最前線から、ビジネス化する創薬の現状をまざまざと伝えるレポート。

◇第1章 日本人社長、外された
◇第2章 「目標共有する大切さ知った」
◇第3章 職人技でスパコンに勝つ
◇第4章 粘り続ける「見つかるまで」


第1章 日本人社長、外された

◎「自らの手で新薬」リスクと見られ
 「目のアルツハイマー病」と呼ばれる病がある。年を重ねるとともに網膜に有害物質がたまり、網膜中心部(黄斑部)の光を感じる細胞が死んで失明しかねない「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」だ。高齢化が進み、患者は世界で1億3千万人を超えるとされる。


 これを治す飲み薬の臨床試験が、欧米で最終段階を迎えている。安全性と有効性が認められて承認されれば、世界初となる。開発したのは2002年に米シアトルで誕生したバイオベンチャー「アキュセラ」。創業社長は、自ら研究者として開発を導く日本人の窪田良(くぼたりょう)(49)だ。


 13年から中立的な機関と共同で実施する「臨床第2b/3相試験」は16年3月に終わる。6月にも公表される結果は公正を期すため、新薬承認機関の米国食品医薬品局(FDA)もアキュセラも公表直前まで知らされない。
 「登山なら9合目かもしれないが、頂上にたどり着けるかはわからない」。窪田は淡々と話すが、頂がすぐそこなのは確かである。
 当初、多くの専門家に「それは無理だ」と疑われた窪田の挑戦は、創業10年余りで最終的な臨床試験に入り、14年2月には東証マザーズ上場を果たしたことで、評価が大きく変わった。
 だが、そこに大きな落とし穴があった。
 窪田が「青天のへきれき」という事件は14年12月22日に起きた。シアトルでの取締役会。社外取締役が突然出した人事案が、その場で可決された。窪田は最高経営責任者(CEO)から外されて会長となり、後任CEOに財務担当で最高執行責任者(COO)のブライアン・オカラガンが就いた。窪田は事前に何も聞かされていない・・・

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