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経済・雇用
朝日新聞社

北海道新幹線で何が変わるか 新たな経済圏の出現

初出:2016年2月28日〜3月4日
WEB新書発売:2016年3月17日
朝日新聞

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 2016年3月26日、北海道新幹線が開業する。悲願がかなった地元では、その経済効果などに期待が高まっている。日本政策投資銀行の試算では、1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)と宮城県から道南を訪れる人の数が、10年度と開業後では、観光客が約9万7千人、ビジネス客が約3万2千人、それぞれ増えると想定されており、その経済波及効果は、136億円にのぼるとみられている。開業のデメリットはあるのか、経済効果を一過性にしないためには、何が求められるのか? 新時代の幕開けを控えた地元の声を紹介する。

◇第1章 北関東・東北と連携強化/日本総研主席研究員・藻谷浩介
◇第2章 青函連携で列島一本化/アークス社長・横山清
◇第3章 観光とは―再考の好機/函館西部バル街代表・深谷宏治
◇第4章 開業効果、「円」で広げる/JR東営業部担当部長・高橋敦司
◇第5章 三セク、地域密着の覚悟/道南いさりび鉄道社長・小上一郎


第1章 北関東・東北と連携強化/日本総研主席研究員・藻谷浩介

◎開業ブーム後の活用策を
 函館空港は函館駅から約8キロと、新函館北斗駅より市街地に近い。函館―羽田便も1時間20分ほど。単純に時間だけで考えれば、新幹線の競争力は全くありません。
 2015年春開業の北陸新幹線もそうですが、観光客の需要が一巡し、ビジネス客やリピーターが多くなる2年目以降はどうなるでしょう。
 函館には、歌にあるように「は〜るばる来たぜ」という一度は行ってみたいプラスイメージがありますが、観光名所・函館山からの夜景も、中心市街地が空洞化したために、人家ではなく、街灯の明かりが多くなっています。
 では、新幹線効果をどうすれば発揮できるのか。私は一刻も早く札幌に延伸するべきだと考えます。あと延伸前も延伸後も、北海道と北関東・東北との連携を強めるべきです。
 九州新幹線開業の大きな意義は、熊本市(都市圏人口100万人)や鹿児島市(同70万人)が、広島市(同200万人)や岡山市(同150万人)と直接つながったことです。北海道新幹線も、函館市(同30万人)が仙台市(同200万人)や宇都宮市(同100万人)とつながります。


 首都圏も北半分は新幹線の商圏です。羽田空港より大宮駅(埼玉)が近い人は、新幹線利用に時間合理性が出てくるからです。
 他方で、新函館北斗駅前の開発には期待できません。日本には新幹線の駅が100近くありますが、開業から半世紀近く経った米原駅(滋賀県)や岐阜羽島駅でも市街地らしきものが出来ていないことを直視すべきでしょう。無理に駅前を再開発するのではなく、乗り換えを充実させ既存の市街地に客を呼び込むべきです。
 新幹線は日帰り客を増やすので、開業ブームが過ぎれば宿泊業の売り上げは逆に減ります。「旧来型の団体宿泊客が朝市を見る」観光ではなく、客単価の高い個人滞在客向けの選択肢を増やすべきです。函館山の原始林を散策して野鳥を見るといった半日〜1日の「エコツーリズム」もすべきでしょう。
 「今だけ」「金だけ」「自分だけ」という風潮のなか、多くの人はブームが去れば新幹線のことを語らなくなります・・・

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