世相・風俗
朝日新聞社

私たち仮面夫婦です 熟年離婚、妻5割「考えたことある」

初出:朝日新聞2006年7月13日〜7月15日、2009年11月3日
WEB新書発売:2016年4月7日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 60代男性。台所のホワイトボードには「11時銀座」「2時歯医者」……。互いに予定を書き込む。話せばけんかになる。会話を減らせるよいアイデア、ともう何年も続いている。ズレは定年後に広がった。妻の言うことがすべて小言に聞こえた。53歳女性。夫との会話はない。「いつか離婚すること」を心の支えに生きてきた。最近は日々電卓をたたいて離婚後の懐具合を試算している――。結婚20年以上の夫婦の「熟年離婚」。読者アンケートによると、妻の5割・夫の3割が「考えたことがある」と答えた。長年連れ添った夫婦に何が起きているのか。

◇[仮面夫婦]―隣にいても心通わず
◇[縁を切る時]―信頼の糸ぷつり
◇[乗り越えて]―自分変え、きずな再び
◇離婚を考えたことは?/妻の心に積もる「不信感」


[仮面夫婦]―隣にいても心通わず

◎妻、将来の懐を日々計算
 カチャ。ドアの音が聞こえると、息子との和やかな空気が凍り付く。帰宅した夫は無言で自室へ直行。結婚して20年余。首都圏に住む50代の女性と夫の間に会話がなくなって久しい。
 大企業勤めの夫は仕事一筋。女性はお茶にお花、外国語教室に通い、働きに出たことはない。「何が不満なの」。周囲から言われる。
 だが、結婚直後から違和感があった。自転車で転んでけがをした時、最初に夫が言ったのは「卵割れなかった?」。妻の体より、買い物袋の中身を心配する人だった。「独身のときよりさびしかった」。心身のバランスを崩してしまった。妊娠中、夫は浮気をしたようだが、もうどうでもよくなっていた。息子が生まれても、「忙しいから」と遊ぶこともなかった。
 育児に夢中になり、精神的に強くなったが、息子が4歳のころ、母子べったりはいけないと我に返った。それからは、「いつか離婚すること」を心の支えにするようになった。受取人を自分にする個人年金に入り、終身年金が商品化されたらすぐ加入した。金利のよいころに投資信託をした。年金分割の話にもピッとアンテナが立った。
 最近は日々電卓をたたいて、離婚後の懐具合を試算している。
 これまでは、離婚への抵抗感があり、働く勇気も力もなく、耐えれば済むと思ってきた。でも今は「1回の人生ですもの。もう我慢しなくていいと思う」。別居も考えたが、夫の姓の墓に入りたくないから「やっぱり離婚したい」。夫には、これまで何度か「離婚したい」と手紙で伝えている。返事は一度もない・・・

購入する

この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

私たち仮面夫婦です 熟年離婚、妻5割「考えたことある」
216円(税込)

60代男性。台所のホワイトボードには「11時銀座」「2時歯医者」……。互いに予定を書き込む。話せばけんかになる。会話を減らせるよいアイデア、ともう何年も続いている。ズレは定年後に広がった。妻の言うことがすべて小言に聞こえた。53歳女性。夫との会話はない。「いつか離婚すること」を心の支えに生きてきた。最近は日々電卓をたたいて離婚後の懐具合を試算している――。結婚20年以上の夫婦の「熟年離婚」。読者アンケートによると、妻の5割・夫の3割が「考えたことがある」と答えた。長年連れ添った夫婦に何が起きているのか。[掲載]朝日新聞(2006年7月13日〜7月15日、2009年11月3日、7400字)

    スマートフォン、タブレットでも読めます。

    Facebookでのコメント

    このページのトップに戻る